(インタビュー/溝上憲文撮影/中岡泰博)「人」は「コスト」ではなく「資産」人に投資し、人を活かす経営を石田 自ら選んだ金融商品の運用を委託している運用委託機関からの情報をチェックすることが大切です。契約の内容や運用の仕組みが変わったときや、運用状況などに関するいろいろなお知らせが半年ないし1年ごとに定期的に届きますが、あまり見ていないという方も多いのではないでしょうか。保有している金融商品の中身についてどういうものを組み合わせているのかは、見てもわからないかもしれませんが、知ろうとすることが重要なのです。わからなければ問合せをすれば懇切丁寧に教えてくれます。聞くことによって知識も深まっていきます。会社としては教育の場を設けることも必要 です。セミナーの開催や社内報などで金融商品の豆知識などの情報を載せてもよいでしょう。従業員の退職金の資産運用に関して会社が勉強会を開催するなど、一緒になって支援していくことで従業員の将来への不安が軽減し、ひいては仕事に対するモチベーションを高めることにもつながると思います。結局、従業員の不安は将来が見えないことからくるものも大きいのです。会社の業績はどうなるのか、つぶれる心配はないのかという不安のほか、老後の生活に関する不安もあります。そうした不安を取り除くためにも、投資についての教育の機会を提供することは中小企業にもできることです。逆に「会社は企業年金をこういうところに委託し、こんな運用をしている」など、情報をオープンにすることで会社に対する信頼も得られると思います。石田 す元手(資金)であり、その元手をいかに活用し、利益を増やしていくかが求められます。財務諸表には貸借対照表や損益計算書がありますが、人件費は損益計算書上の費用に含まれるのではなく、人は会社の資産や資本であり、そこから利益を生み出すのだから貸借対会計学における資本は、利益を生み出照表に載せるべきというのが人的資本の基本的な考え方です。よく例に出されるのがサッカー選手の移籍です。選手の獲得に必要な契約金や年俸は費用ではなく資産であり、資産である選手が活躍すればチームが優勝し、利益をもたらします。石田 もあります。その機械を維持するためのメンテナンス代は費用になりますが、例えば商品を1時間に100個つくる機械を200個つくれるように改良すれば、資産金額が増加します。人材も資産だと考えると、従業員の能力を向上させ、イノベーションを生み出すための教育費や研修費は、収益的支出ではなく、資本的支出として考えることもできるわけです。人に投資し、人を活かす経営は、今後ますます重要になるのではないでしょうか。そうですね。資産には備品や機械装置点とは何でしょう。また会社としては従業員にどのような支援が必要でしょうか。―人はコストではなく、資本や資産であるとする「人的資本経営」が叫ばれています。これまで人件費はコストと意識されてきましたが、企業会計の観点では人的資本経営をどのようにとらえるべきでしょうか。とですね。―企業にとって人への投資が重要というこ玉川大学 経営学部 教授石田 万由里さん2023.84
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