映画『八月の鯨』(1987年)『RBG最強の85才』(2018年)心に残る〝あの作のの品高高齢齢〟者者■■このコーナーでは、映画やドラマ、小説や演劇、音楽などに登場する高齢者に焦点をあて、高齢者雇用にかかわる方々がリレー方式で、「心に残るあの作品の高齢者」を綴ります読売新聞編集委員猪■熊■律■子■ ■■■Augustles of Wha「心に残る〜」と聞いて、すぐに思い浮かんだ映画が二つあります。一つは、1987年のアメリカ映画『八月の鯨(原題は「The 」)』。もう一つは、2018年のアメリカ映画『RBG最強の85才(原題は「RBG」)』。タイプはまったく異なりますが、ともに高齢女性の生き方を描いていて、「おばあさんの世紀※」を迎える日本の将来の姿を考えるにあたっても、参考になるのではないかと思います。今回は欲張って二つの作品をご紹介したいと思います。『八月の鯨』は、アメリカ東海岸を舞台に、鯨がくる入り江の別荘でひと夏を過ごす老姉妹の日常を描いた作品です。目が不自由で偏屈さを増す姉と、かいがいしく世話を焼きつつも将来を案ずる妹。ともに夫を亡くし、支えあって生きる姉妹の姿を、ベティ・デイヴィス、リリアン・ギッシュという2大名女優が共演して話題を呼びました。1時間半におよぶこの映画には特段大きな事件は出てきません。一見退屈そうにも思えますが、老いや死に向きあう2人のさりげない仕草や表情が実にリアルで、他方、一日一日をていねいに、慎ましやかに生きる姿が共感を呼びます。特にリリアン・ギッシュ演じる妹が結婚記念日にドレスを着て、テーブルにキャンドルとバラを飾り、ワイングラス片手に亡き夫の写真に話しかける場面は秀逸です。撮影当時、ベティ・デイヴィスは80歳近く、リリアン・ギッシュは90歳を超えていたといいますから、高齢になってもこんな仕事をする2人の姿に励まされる人も多いかもしれません。一方、『RBG最強の85才』は2020年に87歳で亡くなったリベラル派の米連邦最高裁判事、ルース・ベイダー・ギンズバーグ(通称RBG)のドキュメンタリー映画です。1950年代にハーバード大学法科大学院に入り、その後、コロンビア大学法科大学院を優秀な成績で卒業。それでも彼女を雇う法律事務所は一つもなかったといいます。以降、「性差の壁」を解消しようと、法律の知識を駆使してアメリカ社会を変えていきました。印象深いのは、夫と死別した女性には子どもを養育する給付金が支払われるのに、妻と死別した男性に支払われないのは不合理だと訴え、性差別は男女双方に不利益をもたらすことを社会に知らしめた点です。「闘う判事」というと腕っ節が強そうですが、実際の彼女はとても小柄で、シャイで、ユーモアもたっぷり。若者の間でアイドル的な存在であったというのもうなずけます。年を取ると「喪■う」ものの多さに立ちすくみそうになりますが、老いにはいろいろな生き方があり、どう生きるかは自分次第よ、と励まされる気分になる映画です。※ 2045年には、日本の人口の2割を65歳以上の女性が占めると予測されていることをさした言葉『八月の鯨』リンゼイ・アンダーソン監督.リリアン・ギッシュ,ベティ・デイヴィス出演.アライヴ・フィルム・プロダクション.1987『RBG 最強の85才』ジュリー・コーエン,ベッツィ・ウェスト監督.ルース・ベイダー・ギンズバーグ出演.ファインフィルムズ.201859エルダー第3回
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