エルダー2023年8月号
64/68

新たな修理方法を実現し工期の大幅短縮に成功鉄所では、高炉をはじめ、あらゆる設備が電気によって制御されている。24時間操業に支障をきたさないよう設備を点検するとともに、故障が起きた際には速やかに修理し、また同じような故障が起きないよう改善することが任務だ。「何十億円もするような設備なので、できるだけ長く使い続けなければなりません。それだけに、いかに古い設備に手を加えながら、最新鋭の設備と互角に戦えるようにしていくかが、われわれ整備担当者の腕の見せどころです」そう話すのは、冷延めっき電計整備課に所属する田村等さん。薄板鋼板に亜鉛などでめっき処理をする工程(ライン)の保全を44年にわたり、になってきた。「長年同じ職場にいると、故障が起きても話を聞けば、何となく原因はこの辺じゃないか、というのが見えてくることが多いですね。経験がものをいいますが、一方で、電気関係は日進月歩で新しい技術が出てきますので、日々のスキルアップも大切です」田村さんは「薄板鋼板に溶融めっき塗装を施す過程において最重要設備であるインダクタ設備の保守に関し、優れた技能を有している」ことなどが評価され、「令和3年度千葉県の卓越した技能者(千葉県の名工)」に選ばれた。溶融亜鉛めっき塗装は、約450℃の溶融亜鉛が入った炉のなかに鋼板を通過させ、表面に亜鉛を付着させる。インダクタは電流で炉を加熱するための設備で、亜鉛が溶融した状態を保つために、つねに電源が入った状態になっている。インダクタが故障して亜鉛が固まると、復旧に数カ月かかる。君津地区では、約15〜20年の間隔でインダクタ設備の故障が起きてきた。おもな原因はインダクタ若手の指導を行うのが現在の主要任務。故障の原因を調べて修理したり、プログラムの改造などのシミュレーションを通じて、基本から教えていく62「保全で大事なことは、まず現場を見て異常に気づくこと。そして、オペレーターとのコミュニケーションから、故障の兆候をつかむことです」

元のページ  ../index.html#64

このブックを見る