社会保険労務士いちむら事務所代表特定社会保険労務士市■村■剛■史■■■■組合が主流となっているヨーロッパ(日本では企業別労働組合が主流)で生まれた考え方で、ごく大雑把にいえば、それぞれの産業において職務ごとの賃金額があらかじめ決められており、職務が同じであればどの企業で働いたとしても賃金はおおむね同じ水準になるというものです。これに対し、わが国の同一労働同一賃金は、"同じ事業主のもとで"働く正社員と非正規社員の待遇差を解消し、多様な働き方を自由に選択できるようにすることを目的としています。制度の目的や内容がヨーロッパなどとは異なることから、「日本版同一労働同一賃金」と呼ばれることもあります。さて、現在のわが国の同一労働同一賃金は、「パートタイム・有期雇用労働法(以下、「パート有期法」)」において「均衡待遇」および「均等待遇」として規定されています。「均衡待遇」は、短時間労働者や有期雇用労働者(以下、「短時間・有期雇用労働者」)と通常の労働者(正社員を含む無期雇用フルタイムの労働者)との間で、①職務内容(業務内容と責任の程度)②人材活用の仕組み(職務内容や配置の変更範囲)③その他の事情の三つの要素を考慮して不合理と認められる(つまり、明らかにバランスを欠くような)待遇差を設けてはならない、とするものです(パート有期法第8条)。一方、「均等待遇」は、①職務内容、②人材活用の仕組みが同じである一定の労働者について、短時間・有期雇用労働者であることを理由として待遇差を設けてはならないとするものです(同法第9条)。ですが、短時間・有期雇用労働者のうち特に定年後再雇用者(以下、「再雇用者」)については、再雇用者特有の事情を考慮した判断がされるケースがあります。そこで、次にそのような考え方が示された裁判例について詳しく見てみましょう。定年後再雇用と同一労働同一賃金認しておきたい裁判例が「長澤運輸事件」(最高裁平成30・6・1判決)です。これは、再雇用された嘱託ドライバーが正社員ドライバーと均衡・均等待遇の基本的な内容は前述の通り2023.91622再雇用者の均衡待遇を考えるうえで、まず確11同一労同働一同労一働賃同金一は賃、金もととはもとは産業別労働解説 解説 22同一労働同一賃金と就業規則
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