を判断してはならない、というわけです。これらの裁判例からいえるのは、待遇差の不合理性は、それぞれの待遇の性質・目的・趣旨、さらに経緯を含めた労使交渉の状況などもふまえ、ケースバイケースで判断されるということです。その意味で、それぞれの裁判の結論(待遇差が不合理と判断されたかどうか)だけに注目しても、あまり意味がないといえるでしょう。なお、これらの裁判例は、「均衡待遇」を定めた旧労働契約法第20条をめぐって争われましたが、当時は有期雇用労働者を対象とした「均等待遇」の規定はありませんでした。しかし、現在はパート有期法第9条が設けられていますので、①職務内容、②人材活用の仕組みが同一である場合には、短時間労働者または有期雇用労働者に該当する再雇用者は、「均衡待遇」ではなく「均等待遇」の規定に基づいて判断される可能性もある、という点にも留意しておくべきでしょう。どをふまえ、待遇差を設けたい、あるいは設けざるを得ないといった場合に、どのように検討を進め、就業規則に定めるべきかについて考えてみましょう。まず、すべての待遇に共通してポイントとなるのは、①職務内容、②人材活用の仕組みについて正社員との差異を設けられるか、という点です。これらの差異が小さいほど、均衡待遇に抵触する可能性は高まることになります。特に、②人材活用の仕組みは、一律に取り扱うことが容易であることから、差異を設けるのであれば就業規則上も明確に規定しておくべきです。例えば、正社員には配置転換や転居をともなう異動があるといった規定がある場合には、再雇用者については「あらかじめ本人の同意を得たときを除き、職場および職種を変更し、または出向をさせない」など一方的な配置転換をしない旨を明確にしておくことが考えられます。あるいは、所属事業場の変更があり得る場合には「会社は再雇用者の職場を変更することがある。ただし、変更する職場は、本人が自宅から通勤できる範囲に限る」など、異動の範囲を限定しておくと、待遇差についても説明しやすくなるでしょう。そして、前掲の裁判例にも示されているように、それぞれの待遇を定める目的や理由は何なのか、その目的や理由などに照らして再雇用者の待遇について一定の納得感を得られる説明ができるか、という点も意識しておきたいポイントといえます。について見てみましょう。(1)基本給一律何%までなら許されるか」といった質問を企業から何度か受けたことがありますが、名古屋自動車学校事件で待遇差の不合理性に関する判断は基本給の性質や目的をふまえて行う必要があるとあらためて示されたことから、こうした議論はもはや意味がなくなったといえるでしょう。用者とで同じ制度を適用するのか、異なる制度とするのか、という点を最初に整理する必要があります。基本的に再雇用による待遇差を設けることを重視しない運用になるものと思われます。やや極端な例ですが、例えば純粋な職務給を導入しており、再雇用後も定年前と同じ業務に従事させているといった場合には、職務給の性質・目的をふまえれば待遇に差はつけないという運用になるはずです。基本給制度は異なるものとして(どこまで明確以上をふまえたうえで、次にそれぞれの待遇過去に筆者も「再雇用者の基本給の低下幅は基本給について考える際には、正社員と再雇双方に同じ基本給制度を適用する場合には、ただし、多くの企業では正社員と再雇用者の2023.91833それでおはも、な均労衡働・条均件等と待就遇業の規規則定のや規裁定判例な
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