エルダー2023年9月号
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内田教授に聞く高齢社員が働きやすい職場の実現には、評価や処遇など人事制度の改善や職場環境の整備だけではなく、高齢社員自身が環境変化に適応して強みを発揮できる人材へと変身することが欠かせません。多くの高齢社員に期待される若者への技能伝承や後継者育成ですが、高齢社員にとってはあたり前だった「背中を見て学べ」という方法はいまでは効果が小さいでしょう。「先輩のやり方を見て、自分で感じ取って学ぶものだ」と高齢社員が精神論を語っても若者には通じず、レベルも向上しません。教える側が具体的に分かりやすく説明しながらやって見せることが必要です。高齢社員には若者の意識やレベルを感じ取る力、分かりやすく説明して納得させる教え方を身につけることが求められます。製造技術や販売手法、使われる設備や機材はつねに変化しています。日常業務でもパソコンや業務ソフトが不可欠となり、仕事の進め方も昔とはおおいに異なります。若者の仕事に向きあう考え方も変わっています。品質や顧客への姿勢などこれからも変えてはならないものはしっかり守りながらも、変化した現状を理解し、現在の技術や手法、ツールを活用した「いまに即した教え方」を身につけて指導することが効果を高めます。そこで必要となるのが高齢社員の「学び直し」です。その結果、若者や中堅にはない強みを持つ高齢社員が、時代の変化に対応できる柔軟性を持った戦力へと生まれ変わります。なお、若者の側に高齢社員に対する先入観があれば、すれ違いが起こるかも知れません。高齢社員から教わる前に若者が高齢社員の思考や行動パターンを理解しておけば、高齢社員の教えを受け入れやすくなります。(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)では若者向けマンガ「マンガで考える高齢者雇用」」※を用意しています。JEEDホームページからご覧になれるほか、冊子を無料で配布しています。※ https://www.jeed.go.jp/elderly/data/sankousiryou/shosinsha/comic.html ▼31エルダーマンガで学ぶ高齢者雇用プロフィール集中連載内田 賢(うちだ・まさる)東京学芸大学教育学部教授。「高年齢者活躍企業コンテスト」審査委員(2012年度〜)のほか、「70歳までの就業機会確保に係るマニュアル作成・事例収集委員会」委員長(2020年度〜)を務める。若手や中堅社員にはない強みを持つ高齢社員が戦力であり続けるには「学び直し」が必要 社会や労働者を取り巻く環境が急激に変化していくなかで、一人ひとりが活躍し続けるためには、「学び直し」により知識やスキルのアップデートをしていくことが欠かせません。70歳までの就業確保が企業の努力義務となったいま、 “生涯現役”で活躍するための高齢社員の「学び直し」の重要性について、東京学芸大学の内田賢教授に解説していただきました。解 説解 説解 説最終回高齢社員の活躍推進に向け「学び直し」に取り組もう教えてエルダ先生! こんなときどうする?Season2高齢者雇用のポイント

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