エルダー2023年9月号
38/68

他業界での知見を福祉業界で発揮し事業に貢献■■■■たが、定年後の労働条件については個別に決定しているような状況があったので、高齢職員を含むすべての職員が安心して継続的に勤務可能となるような人事制度を提案しました」とふり返ります。職員が安心して働ける取組みの一つが「短時間正規職員制度」の導入です。正規職員のまま短日数または短時間での就労を可能にするというもので、「同制度を利用することで、病気の治療を続けながら働けるほか、若い世代であれば育児と仕事の両立を図るうえでも便利な制度です。実際に制度化している事業所はまだまだ少なく、先進的な取組みだと思います」と副島プランナーは話します。また、55歳以降は昇給なしとしていた賃金制度とともにキャリアパスを全面的に見直し、高齢期に至るまでのキャリアルートを整備。あわせて業務の棚卸しを実施しました。これにより高齢職員に期待する役割や職責が明らかとなり、高齢職員からは「やりがいが出る」と歓迎の声があがっています。そのほか、職員の健康づくりにも注力しており、看護師資格を持つ職員を健康推進責任者として任命し、健康相談窓口を設置するほか、定期健康診断のフォローを徹底しています。気心の知れた職員からの気さくな声かけや、相談のしやすさは、健康に不安を抱えがちな高齢職員が安心して働ける環境につながっています。一方、職員慰労旅行や食事会は、高齢職員のみならず職員全体に好評な慰労イベントです。1人1万円の補助があり、事業所ごとに実施するところがポイント。各人の都合により他事業所のイベントへの参加も可能となっており、ほとんどの職員が参加しているそうです。幅広い年齢やほかの事業所の職員との交流の貴重な機会になると喜ばれています。今回は、高齢での入職ながら、職場になくてはならない存在となっているお2人の高齢職員にお話をうかがいました。勤続年数12年の秀■島■博■文■さん(67歳)は、就労継続支援B型事業所※1「スプリングフィールド」で作業主事として利用者の就労支援を行っています。「利用者が自分でできるように」をモットーに掲げ、温かく見守りながら利用者の支援にあたっています。同法人への入職以前は、営業職として、民事再生事業などに取り組んできた秀島さん。厳しい交渉は日常茶飯事で、ときには激しい意見のぶつかりあいになることもあったのだとか。「互いに本気の意見をいいあうからこそ、結果的に信頼関係を築くことにつながります。だからこそ、若いスタッフには、『嫌いな人とつきあうとよい、相手は自分にないものを持っているから吸収できることがある』と話しています。また、1人で見たら一つのことも、2人で見たら二つの視点があります。マニュアルだったら一つしかありません。だから積極的に人とかかわって視野を広げてほしいです」と、若手への指導のポイントを話してくれました。宮原理事長は、そんな秀島さんの高い交渉力や広い視野を次世代に引き継いでもらいたいと期待しています。現在は週5日フルタイムで勤務し、休暇は趣味を楽しんでリフレッシュし、不調の際は無理せず休むようにしているとのこと。「『だれにでも平等にある24時間をどう使うか』という若いころに聞いた言葉がいま響いています。健康を維持しなが2023.936作業内容について若手職員の保坂志麻さん(左)と打合せをする秀島博文さん(右)※1 就労継続支援B型事業所…… 一般企業に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が困難である障害のある人に対して、生産活動などの機会の提供、知識および能力の向上のために必要な訓練などを行う事業所

元のページ  ../index.html#38

このブックを見る