エルダー2023年9月号
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987654と書きましたが、職務限定の有期雇用にふさわしい短期決済型のジョブ型賃金を運用するためには、定年前の正社員の昇給ピッチ(例:Ⅲ等級2800円、Ⅳ等級3700円など)よりも意識的に大きな昇給単位とすべきでしょう。なぜなら、高齢者の場合、働く人の志向性や健康状態、家庭事情などにより、能力・意欲はもとより、本人が希望する就労条件も予想外に変化することが多いからです。業務の内容や責任の程度が大きく変わる可能性や、契約そのものを終了させる可能性も想定すると、契約更改のつど対応する賃金ランクに変更できる短期決済型の仕組みのほうが、合理性があるという意見も否定できません。接近法■)を継続雇用賃金に応用する方法を紹介しましたが、短期決済型のジョブ型賃金の考え方をより一歩進めて、職務レベルの判定に対応した賃金ランクの上限額をストレートに適用する方法を紹介します(図表6)。これは労働契約書で定めた職務内容(賃金ランクに連動)について、1年間の実績評価と職務レベル判定を行い、また働き方についても話し合い、契約更改の都度対応する賃金ランクおよび賃率の再雇用賃金を提示します。前述のXさんの例でいうと、定年前の賃金35万円に支給率80%(賃率90%−減額率10%)を図表5では正社員と同じ賃金改定手法(段階掛け算して定年後はⅢ等級28万円という仮計算を行います。賃率90%の賃金表でこの28万円と同額または直近上位の上限額を求め、B評価に対応する上限額29万8800円がXさんの1年目の再雇用賃金となります。2年目以降の契約更改は、現行の賃金ランクと職務レベルを比較し、賃金ランクと職務レベルとにギャップがある場合は、実際に従事する職務レベルにあわせて賃金ランクおよび再雇用賃金をただちに変更します。さらに働き方や人材活用の仕方が変わったときは、対応する新たな賃率を適用し、その金額が新年度の再雇用賃金となります。更改でC評価・1ランクDOWNとなり、同時に働き方の見直しにより賃率がⅱ85%になったときは、26万100円が2年目の再雇用賃金となります。同様に3年目もC評価・1ランクDOWNでさらに働き方の見直しにより賃率がⅲ80%となって22万4800円となり、4年目はその賃率のままS評価・2ランクUPで26万5600円というように、再雇用賃金が推移していきます。次回は、役割給の活用による定年延長とジョブ型賃金の組み合わせ方法や、定年制廃止を視野に入れた、日本企業に合ったジョブ型雇用・賃金待遇のあり方について解説します。図表6の右の例では、Xさんは2年目の契約43図表6 短期決済型のジョブ型継続雇用賃金の実施例1年目2年目Ⅳ等級正社員係長・職長クラス(役割給)↓ゾーン賃率→Sゾーン上限A 〃B 〃C 〃D 〃下限額※Ⅳ等級35万円 (賃率100%)×賃金支給率80% → ※Ⅲ等級28万円 (賃率90%)定年前:Ⅳ等級係長・職長クラスの例※基本給Bゾーン35万円、定年後は80%の28万円に換算(賃率90%)し、1年目は90%の継続雇用賃金の上限額=7ランク・298,800円を適用、2年目以降も職務レベル判定に見合う賃金ランクと、働き方に見合う賃率の上限額を1年契約で適用する。©株式会社プライムコンサルタント 禁無断転載7ランク定年再雇用主任・チーフクラス(ジョブ型継続雇用賃金表)(無限定勤務)↓賃金ランク賃率→(無限定勤務)100%451,000419,000389,000360,000※350,000332,000306,000エルダーまったく変わらないⅰ再雇用という事情以外は基本的に変わらないⅱ働き方や人材活用が若干限定される350,100324,000※298,800275,400252,900231,300100%389,000360,000332,000306,000281,000257,00090%85%ⅲ働き方や人材活用が大きく制約される80%職務レベルの判定基準(例)330,650306,000282,200※260,100238,850218,450311,200288,000外部と連携し、幅広い知識を活用して裁量的に判断・意思決定する仕事4年目※265,600244,800企画・プロセスを配慮しながら自主的に判断・意思決定する仕事3年目※224,800205,600一定の計画・手順を活用して自己責任で判断する仕事シニア社員のためのシニア社員のための「「ジョブ型ジョブ型」」賃金制度賃金制度ののつくり方つくり方

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