エルダー2023年9月号
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LGBTに関する対応について教えてほしいえで、嘱託社員の基本給の性質および目的も検討されてないとされました。二つ目の考慮事項として、労使交渉に関する事情があげられています。同一労働同一賃金の不合理さを判断するにあたって「その他の事情」として考慮するということは、従前の判例で示されています。また、当該事情については、その結果のみならず、その具体的な経緯をも勘案すべきものとされています。本件の下級審においては、原告のうち1人が労働組合の分会長として、嘱託社員と正社員との賃金の相違について回答を求める書面を送付した事実が認定されているだけで、その後の具体的な経緯が不明瞭なままとなっていました。最高裁としては、正社員の基本給の性質および目的が不確定であるうえ、嘱託社員の基本給の性質および目的も検討されていなかったこと、労使交渉の具体的経緯が不明であることから、高等裁判所で判断し直さなければならないと判断したということです。基本給の性質や目的について、わざわざ定めているとはかぎらず、使用者が詳細に定めていない場合、これまでの運用などから認定されることになると考えられます。正社員と嘱託社員における基本給の性質および目的を相違させておくということも、賃金の相違を説明する要素になるということは一考に値するでしょう。1近年、多様性を受け入れること、とりわけ性的少数者とも呼ばれるLGBTについて、対応をしていくことが求められています。LGBT理解増進法も成立し、今後はLGBTの対応に関する話題が加速していく可能性があります。例えば、トイレの利用は、男性と女性が分けられており、これは身体的な性別により分けられてきたというのが、これまでの歴史的な背景としてあります。女性の立場からすると、身体的には男性の人物がトイレに入ってくることに抵抗を感じるという話題はよく耳にするところであり、性自認に合わせたトイレの利用を認めることは容易ではないでしょう。2経Fの職員が、女性トイレの利用を認めるように求めた事案について、執務するフロアと上下1フロア離れたトイレ以外の利用しか認めなかった判断に対して、2023年7月11日に最高裁の判決が出ました。という措置が違法であるという判断であったため、広く報道されるなど、企業に与える影響も大きかったようにも思われます。しかしながら、最高裁判決では、慎重な考慮を重ねたうえで結論を出しており、結論だけを見ることは済産業省において、ご質問と同様にMt結論として、女性トイレの利用を認めない多様性の確保とその対応トイレ利用に関する最高裁判決について各社の状況や具体的な職員の意思などをふまえて、個別具体的に決定していくことが重要です。ただし、時間をかけつつ、可能なかぎり理解を求めていくという努力は必要になると考えられます。Q2男性職員から、自分はMtF(Male to Female)なので、女性トイレの利用を認めるように申し入れがありました。多様性を認める観点からはこれを認めていく必要性があるようにも思われますが、女性職員の意向も汲■む必要があると思います。どのように対応したらよいでしょうか。2023.946A

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