エルダー2023年9月号
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選択肢はさまざま就業機会の確保とは「仕事に就ける機会を確実に手に入れること」をいいますが、人事では「70歳までの就業機会の確保」と使われることが多い用語です。本稿でも高年齢者雇用に特化して説明していきます。高齢者の雇用推進や活躍できる環境整備を図るための法律として高年齢者雇用安定法※1があります。ここでは60歳以上の雇用について、大きく二つの定めをしています※2。一つ目は、65歳までの雇用確保(義務)です。ここでは、事業主に対して60歳未満の定年禁止と65歳までの雇用確保措置を義務として実施すべきと定めています。65歳までの雇用確保については、①65歳までの定年引上げ、②定年制の廃止、③65歳までの継続雇用制度(雇用している高齢者を、本人が希望すれば定年後も引き続いて雇用する、「再雇用」などの制度)のいずれかの措置をとるべきとされています。二つ目は、65歳から70歳までの就業機会の確保(努力義務)です。ここでは、事業主は次のいずれかの措置をとるように努めるべきことが定められています。①70歳までの定年引上げ、②定年制の廃止、③70歳までの継続雇用制度、④70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入、⑤70歳まで継続的に社会貢献事業(事業主が自ら実施する社会貢献事業、事業主が委託・出資等する団体が行う社会貢献事業)に従事できる制度の導入の五つです。だけで同一の内容に見えますが、③の継続雇用については継続雇用の範囲が65歳未満は自社または特殊関係事業主(自社の子法人、親法人、関連法人等)であるのに対して、65歳以上70歳未満はこれらに加え、特殊関係事業主以外の他社も範囲に含まれます。また④⑤については65歳までの雇用確保にはない選択肢です。また、①〜③は直接雇用であるのに対して、④⑤は雇用はしないものの就業機会を提供するという点が異なります。特に④については、事例としても実際に増えています。例えば、個人事業主として起業し、得意とする業務の遂行や成果に対して報酬を受け取る業務委託契約を在籍していた会社や複数の会社から得るようなケースです。なお、このような雇用によらない選択肢をとる場合、事業主には、制度に関する計画を策定し過半数労働組合などの同意を得て、計画を周知する手続きを行ったうえで、個々の高齢者と業務委託契約などを締結する創業支援等措置を実施することが求められます。①〜③は65歳までの雇用確保と年齢が異なる2023.950株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之 人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。※1 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律※2 本連載第2回(2020年7月号)「定年」をご参照ください https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/series.html「就業機会の確保」第38回70歳までの就業機会の確保の■■■■■■■■いまさら聞けない人事用語辞典

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