エルダー2023年9月号
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高齢者こそ柔軟な働き方が必要企業の対応状況は道半ば働き方の選択肢が広がっている点が70歳までの就業機会の確保のポイントとなるのですが、これは高齢者雇用を考えるうえで参考となります。たのは、改正高年齢者雇用安定法が施行された2021(令和3)年4月1日からと近年のことです。しかし、ここに至るまで、65歳以降の雇用についてはニッポン一億総活躍プラン(2016〈平成28〉年)、働き方改革実行計画(平成29年)、成長戦略実行計画(2019年)など国の大きな方針を定める計画や会議などに何度も論点として出てくるため、特に今後深刻化が見込まれる人手不足解消の重要課題として考えられてきたのは間違いありません。そこで共通しているのは、高齢者の寿命や健康・身体能力の観点から高齢者の就業率は現在よりも大幅に高い水準になる余地がある、また多くの高齢者も65歳を超えても働きたいと願っているのに、高齢者が働く環境が整っていないという課題感です。一方で、体力や意欲差が大きく、介護などの事情を抱えるケースもあり、フルタイムでの働き方を一律で押しつけるわけにはいかないという実態もあります。このため、高齢者のニーズに応じた働き方ができるようにして、より多くの継続的な就業をうながしたいという意図が背景にあります。最後に、70歳までの就業機会の確保に対する企業の対応状況を見ていきます。改正高年齢者雇用安定法の施行から1年以上経つ「令和4年 高年齢者雇用状況等報告」(厚生労働省)によると、70歳までの就業確保措置を実施済みの企業は27・9%(前年より2・3%増)、また、図表を参照すると66歳以上まで働ける制度のある企業のなかでも、基準該当者66歳以上の継続雇用制度という65歳以上の希望者全員を必ずしも対象としない制度を用いている会社は11・8%となっています。これらのことから改正高年齢者雇用安定法の意図する対応ができていない企業がまだまだ多いということがわかります。であるため喫緊の課題とはとらえていない企業があることと、対応はしたいが健康面や働き方の観点から不安があり実行に移すのが不安という面もあると思います。後者の場合には、「70歳雇用推進事例集」((独)高齢・障害・求職者雇用支援機構〈JEED〉)※3、「シニアが輝く職場をめざして」(東京都産業労働局)などの企業における具体的な事例を参考にする、高齢者雇用の専門家であるJEEDの70歳雇用推進プランナーや高年齢者雇用アドバイザーに相談や助言・提案を受けることなどで、実施に向けた一歩がふみ出せるかもしれません。この理由については、現状では「努力義務」* * 次回は「両立支援」について解説します。51図表 66歳以上まで働ける制度のある企業の状況11.2%11.2%15.3%15.3%10.8%10.8%全企業(40.7%)301人以上(37.1%)21〜300人(41.0%)0%5%出典:厚生労働省「高年齢者雇用状況等報告」(2022年)定年制の廃止定年制の廃止希望者全員66歳以上の継続雇用制度希望者全員66歳以上の継続雇用制度基準該当者66歳以上の継続雇用制度その他66歳以上まで働ける制度基準該当者66歳以上の継続雇用制度その他66歳以上まで働ける制度3.9%3.9%0.6%0.6%0.8%0.8%5.1%5.1%4.2%4.2%3.4%3.4%エルダー10%15%20%25%66歳以上定年66歳以上定年3.2%3.2%10.6%10.6%11.8%11.8%15.3%15.3%11.0%11.0%11.5%11.5%30%35%40%45%※ 66歳以上定年制度と66歳以上の継続雇用制度の両方の制度を持つ企業は、「66歳以上定年」のみに計上している。※ 「その他66歳以上まで働ける制度」とは、業務委託等その他企業の実情に応じて何らかの仕組みで66歳以上まで働くことができる制度を導入している場合を指す。※3 https://www.jeed.go.jp/elderly/data/manual.html*70歳までの就業機会の確保の選択肢が広がった70歳までの就業機会の確保が努力義務化され■■■■■■■■いまさら聞けない人事用語辞典

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