エルダー2023年9月号
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若い世代にはやりたい道を進んでほしいhttp.jewelry-compl.pete.jco有限会社コンプリートTEL:03(3942)7992://www(撮影・福田栄夫/取材・増田忠英)子しの制作など、過去に経験のない成。まさに金属を自在に加工する匠の技が見てとれた。なお、このように叩いてつくられた指輪は、金属の粒子が締まり、キャストでつくられた量産品と違い、指にはめたときの着け心地もよいそうだ。また、各パーツを接着するロウ付けにも高い技術が求められる。ロウ付けは、合金のロウを溶かすことでパーツ同士を接合する。複数のパーツを組みあわせる場合、用いるロウの融点が同じだと、ロウ付けをする際に、先にロウ付けした部分のロウが溶けてパーツが外れてしまうことがある。そこで三塚さんは、金属の配合を変えて融点の異なるロウを複数つくり、融点の高いロウから低いロウへと順にロウ付けを行うことで、複雑なロウ付けでも対応できるようにしている。こうした高い技能を持つ三塚さんのもとには、金属と竹や皮といった異素材の組みあわせや、厨ず依頼が寄せられることも少なくない。そうした注文に対して、その都度研究をしながら新たな方法を編み出すのが楽しいそうだ。三塚さんは製作にたずさわるかたわら、東京貴金属技能士会の事務局長、文京区伝統工芸会の会長などを務め、技能の振興にも取り組んでいる。東京都が実施する、若い世代が職人の指導を受けて技能の継承や後継者育成に結びつけることを目的とした「職人塾」にも長年にわたり協力してきた。また、雅子さんが主宰するジュエリー製作の教室を通じて、若手の育成も行っている。「本当に好きでやりたい若者がいれば、何としてもその道に進んでほしい」と後進にエールを送る。63エルダー右の指輪の裏側。繊細な細工が施されているのがわかる。手作業でなければできない技だ三塚さんの仕事場。所狭しとさまざまな道具が置かれている23歳のときに独学でつくった作品。入社面接時に持参し、「手作り部門」に採用された三塚さんが手がけたブラックオパールの指輪。周囲には複数のダイヤモンドが施されているジュエリーデザイナーの妻・雅子さんと打合せをしながら、顧客に喜んでもらえるようなジュエリーのデザインを検討する銀製の指輪づくりの一工程。わずか15分ほどで銀の角棒が指輪状になった vol.331

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