躍してくれた社員たちの定年が迫ってきました。定年を廃止したのは、人口減少と少子高齢化がさらに進むとされるなか、貴重な戦力を年齢だけを理由に失いたくない、と考えたことがきっかけです」とふり返ります。定年制の廃止は、店長や部門長、50歳以上の社員代表と協議やヒアリングを重ねて検討したそうです。職場からは「定年制があることで退職されてしまうのは困る」という声が多く聞かれ、50歳以上の社員からは、「可能なかぎりここで働きたい」との希望が多く寄せられました。定年制廃止が決定した際には、鹿取代表取締役から全社員に「働けるうちは、年齢を気にせず仕事を続けてください」と説明。退職金は、中小企業退職金共済制度に加入しており、支給は本人の希望年齢や退職時点で清算することとしました。定年制廃止と同時に、ワークライフバランスや病気の治療と仕事の両立、病気療養後の職場復帰などへの配慮も必須であると考え、短時間・短日数勤務といった柔軟な勤務形態を導入。安全で働きやすい職場環境づくりに取りかかりました。高齢社員は、パートタイマーがほとんどで、正社員は現在1人。高齢を理由に時給や月給を減額することはありませんが、フルタイム勤務から短時間・短日数勤務への変更など、本人の希望に応じており、働き方や条件は会社と本人とで話し合います。「短時間勤務の社員が増えた分は、ほかの社員でカバーしています。やってみると何とかなるもので、例えば4人の部署で、定年で一人辞めて3人になるのと、4人のまま一人の勤務時間が少し減るのとでは大きな違いです」と鹿取代表取締役。カバーをし合う体制づくりを進めることで、有給休暇が取りやすい職場に生まれかわり、ほかの会社を定年退職した方など、シニアを採用しやすくなるという変化もありました。安全で働きやすい職場づくりについては、以前から高所に物を置かない、踏み台に乗って作業をしないことなどを徹底。さらに、現場の社員の意見を反映し、惣菜加工場では、照明のLED化や、油ですべらないための滑り止めマットなどを導入。このマットは転倒防止に加え、掃除がしやすくなったと現場から好評を得ているそうです。また、バックヤードにおいても、カートの導入や、IT化の推進にも取りかかり、容器や材料発注のために使用している現在の端末を大きく扱いやすいものに換えることを検討。レジシステムについても、「見やすい、わかりやすい、簡単操作機能」の機器の導入を検討中です。現場の声に耳を傾けて、鹿取代表取締役は積極的に改革を進めています。さらに、介護や通院、孫の送迎など、「高齢社員の家庭や地域社会での役割にも配慮し、日ごろから家庭のことが最優先」と話しているとのこと。「家族の看病などが必要になったとき、『家庭であなたの代わりをできる人はいませんよ』と話して、会社に事情を打ち明けてもらえるようにしています」(鹿取代表取締役)一方で、職務遂行においては、60歳未満の社員と同様、清潔な身だしなみや迅速な行動、ていねいな接客応対を期待しており、高齢だからといって特別扱いはしていないそうです。徳山プランナーは、2021年に同社を初めて訪問した際に、これらの取組みに触れ、「他社に先行する優れた取組みを行っており、働きやすさへの配慮はもとより、人を大切にする姿勢に感銘を受けました。高齢者雇用の積極的な推進が生産性向上にもつながっています」と高く評価。そして、「中央資本の大手量販店が市場を席巻するなかで、地域の雇用の場として重要な役割をにない、大村市の地場企業として地域密着型経営を続けている同社の存在を広く知らせたい」と思い、JE退職するのと短時間勤務とでは大違い現場の声に耳を傾け環境改善2023.1034
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