一つめは経営上の課題。アンケート調査※1によると、経営上の課題のトップ3は、①若年層の採用難、②人材の量的な不足、③人材の高齢化となっています。二つめの課題は、「働き方改革」への対応です。時間外労働の上限規制の適用開始が建設業にも迫り※2、人手不足のなかでいかに対応していくかという問題が生じています。三つめが、ICT(情報通信技術)化への対応です。コンピュータ制御によるICT建機も増えており、日常の雇用管理もスマートフォンを使って行うなど、ICT化が進んでいます。若手社員だけではなく高齢社員も現場のICT化に対応していくことが求められています。 四つめは一部の業種に顕著かもしれませんが、パワーハラスメント防止措置の義務化への対応です。2022(令和4)年4月から中小企業においても職場のハラスメント防止対策が義務化されました。建設現場の作業は平田 私自身は2015(平成27)年から産業別高齢者雇用推進事業にたずさわり、今年で9年目になります。現在取り組んでいる産業を含めて8団体の調査にかかわりましたが、高齢者雇用の実態は産業ごとに異なりますし、企業によっても異なります。産業・企業が直面している課題も違えば、出口の解決策も違うなど、じつに多様であることに気づかされました。一方で共通点もあります。例えば、建設現場で重機などの作業機械を使って土木工事を行う機械土工工事業界の場合、取りまとめたガイドラインのなかで高齢者雇用を取り巻く五つの課題をあげており、これはほかの産業に共通する部分も多いと思います。危険をともなうため、不安全行動などをベテラン社員が強く注意することがあり、それが若い人にパワハラと受け取られる可能性もあります。パワハラ防止措置の義務化に対応しながら、いかにベテランが若手に技能を継承していくかが課題になっています。義務とする、改正高年齢者雇用安定法への対応です。躍と若手の確保と定着に関する課題ですが、これらは多くの産業にも共通する課題ではないでしょうか。平田 行った実態調査によると、機械土工工事業は回答企業の約8割が従業員数100人未満ですが、葬儀業などはさらに規模が小さく、9人以下の企業が49・7%と約半数を占めています。一方、製造業の電子デバイス産業では00人以上の企業も13・0%あり、幅があります。五つめが70歳までの就業機会の確保を努力以上が機械土工工事業における高齢者の活まずは企業規模の違いです。産業別にまた、社員の高齢化の状況も異なります。※1 出典:「機械土工工事業における高齢者活用と若者定着に関するアンケート調査(人事担当責任者票)」※2 建設業における時間外労働の上限規制は、2024年4月より適用される―平田さんは、JEEDの「産業別高齢者雇用推進ガイドライン(以下、「ガイドライン」)」の策定にたずさわっています。産業ごとの高齢者雇用を取り巻く環境や実態について、見解をお聞かせください。のでしょうか。―では、産業ごとの違いとはどのようなも産業ごとに異なる高齢者活用の実態一方で多くの産業に共通している課題もある2023.102三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社政策研究事業本部 経済政策部 主任研究員平田 薫さん44・4%が100人未満の企業ですが、10
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