エルダー2023年10月号
41/68

貢献の差(SABCD)用制度の方が、働く方も気持ちを切り替えやすく、企業にとっても使い勝手がよかったわけです(連載第3回〈2023年7月号〉参照)。他方、再雇用にともなう賃金待遇の切り下げは、高齢社員の仕事の質の低下、ひいては帰属意識や働く意欲を大きく低下させ、定年前の正社員にも悪影響がおよぶなどの弊害が多くの企業で問題となっています。また新パートタイム・有期雇用労働法(2020〈令和2〉年4月施行)が求める均衡待遇の規定に照らしても、安易な賃金待遇の切り下げは、法が禁止する不合理な賃金待遇差に問われるリスクがあります。近年は人手不足の波が高齢者雇用にも押し寄せ、65歳定年延長にふみ切る会社がじりじりと増え続け、2022年6月1日現在、65歳定年の企業は22・2%に達しました(厚生労働省「令和4年『高年齢者雇用状況等報告』※1)。定年延長を実施した企業の動向をみると、少子化で熟練技能や専門業務の承継者不足が問題となるなか、60歳以降の高齢社員の仕事のニーズが根強く、安定して働ける高齢者が増えればプラス効果が大きいという経営判断がうかがえます。働く方も、65歳まで仕事も労働条件も途切れなく安定する定年延長のほうが、長年働いてきた組織への帰属意識と貢献意欲を保ちやすいというのは大きなメリットでしょう。ところで65歳までは定年後再雇用または定年延長、定年廃止などの方法で希望者全員の雇用を確保する義務があります。一方、65歳〜70歳までの就業確保措置については、努力義務であることから、希望者全員ではなく、例えば「直近2年の人事評価がB以上」、「過去3年間の出勤率が95%以上」などの具体的・客観的な対象者基準を就業規則に規定することにより対象者を限定することができます(厚生労働省「高年齢者雇用安定法Q&A(高年齢者就業確保措置関係)」⑩⑬※2)。2正社65員の歳役定割年給延と長再雇の用す者すのめジ方ョブ型賃金を活用して65歳定年延長を実施するパターンは、大きく2通りあります。一つは単純に全員同一基準で65歳定年延長を実施する方法、もう一つはある年齢以降の正社員は責任役職を離れる「シニア社員制度」を活用する方法です。前者は年功的な賃金カーブがそれほど立っていない中堅・中小企業が、役割給の全面導入を前提として、65歳定年延長を実施する一般的なパターンです(図表2)。まず、賃金カーブがそれほど立っていない企業の場合、役割等級別に範囲給を設定し、貢献度の高さに見合う賃金の上限規制を実施することにより、高齢社員の人件費オーバー・コストは目に見えて解消します。いったんその見通しが定着すれば、高齢者の雇用ニーズが高い会社は、比較的短い期間で役割給を受け皿とする65歳定年延長に移行できるようになります。前回、ジョブ型継続雇用賃金表の運用事例を定年 39エルダー図表2 役割給の全面導入による65歳定年延長のイメージシニア社員のためのシニア社員のための※1  https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_29133.html※2 https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000745472.pdf役割給の昇給・昇格モデルカーブのイメージ(役割と貢献度により賃金カーブが分岐)(対象者を限定)(対象者を限定)定年後再雇用賃金契約更改契約更改役職・配置の随時見直し役職・配置の随時見直し雇用確保措置雇用確保措置(金額)©株式会社プライムコンサルタント 禁無断転載役割給の役割給の上限・下限上限・下限イメージイメージⅥ(部長級)Ⅵ(部長級)Ⅴ(課長級)Ⅴ(課長級)Ⅳ(係長級)Ⅳ(係長級)Ⅲ(主任級)Ⅲ(主任級)Ⅱ(非役職)Ⅱ(非役職)Ⅰ(非役職)Ⅰ(非役職)役割の違い役割の違い(役割等級)(役割等級)・実力主義の人事を柔軟に行い、適正配置により組織の戦闘力を維持する・昇降格にメリハリをつけ、属人的・身分的な待遇から脱皮する部長モデル部長モデル課長モデル課長モデル係長モデル係長モデル主任モデル主任モデル非役職モデル非役職モデル60歳65歳正社員と継続雇用に同一の役割給体系を適用(ジョブ型賃金待遇)同一労働同一賃金に抵触しない設定定年後再雇用定年後再雇用就業確保措置就業確保措置(年齢)70歳「「ジョブ型ジョブ型」」賃金制度賃金制度ののつくり方つくり方

元のページ  ../index.html#41

このブックを見る