エルダー2023年10月号
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シニア社員制度を活用した(SABCD)貢献の差紹介しましたが、もともと1年ごとの契約更改をくり返す定年後再雇用は、役割・職務内容と働き方を見直し、ジョブ型の柔軟な賃金待遇を実践する方式に適しています。無期雇用のメンバーシップ型の正社員には、さすがにジョブ型賃金はフィットしません。ただし、今後は正社員についても、組織のニーズ、そして働く人のニーズをふまえて役割・職務内容や働き方を見直す、より柔軟な個別の賃金マネジメントが求められることは間違いありません。これからは人的資本経営の考え方が中小企業にも浸透し、事業戦略の見直しや環境変化に積極的に適応する企業が優位性を占めるようになります。そのような企業では、いわば戦略的な組織・人事運営があたり前になり、経営者は性別・年齢にかかわりなく役割の配置や職務内容を不断に見直し、ポジションにふさわしい実力人材を早期に発掘・登用することに注力するでしょう。すでに多くの企業では従業員個々の役割と職務内容・成果責任を確認し、目標設定や業績評価、行動評価を行う仕事基準の評価制度が定着しつつあります。今後は、役割給を導入することにより、組織における仕事のポジションに基づいて貢献度を客観的に評価し、賃金待遇を段階的に調整する人材マネジメントが徐々に定着すると思われます(連載第4回〈2023年8月号〉参照)。3他方65、定歳年定前年の延賃長金カーブが大きく立っている中堅クラス以上の企業では、役割給を導入しても、人件費のオーバー・コストは完全には解消しないかもしれません。その場合、次善の策として役職定年や進路選択制の継続雇用制度(厚生労働省「高年齢者雇用安定法Q&A〈高年齢者雇用確保措置関係〉のなかでいったん高齢社員の賃金を切り下げる「シニア社員制度」を活用する方法も有力な選択肢といえます。図表3がそのイメージ図です。これは55〜60歳前後を境目に、原則として高齢社員全員が部長・課長などの責任役職※4を離脱し、65歳までシニア社員(名称は任意)として高度専門職または非役職の一般従業員にコース変更させ、65歳まで雇用を継続する方法です。正社員身分の間に新たな役割と職務内容に転換して賃金待遇を切り下げ、定年前の人件費のオーバー・コストを一定程度減らしておきます。そのうえで65歳以降の再雇用制度を導入すれば、正社員と定年後再雇用者との間の賃金ギャップも少なくなり、同一労働同一賃金にも対応しやすくなります。なお責任役職や通常の正社員に対しシニア社員の賃金を切り下げる根1−5、1−6参照※3)を応用し、正社員身分拠については、図表4の⑸⑹⑺を参照してください。部長・課長などの責任役職に対しては、役職の任期を一定年限で区切り、事業成長のための機動的な組織運営に基づく適正配置・人材活用定年 2023.1040図表3 役割給とシニア社員制度を活用した65歳定年延長のイメージ※3  https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/kourei2/qa/※4  部長・課長、グループ長、チーム長などの単位組織の成果責任をにない、部下を統括するマネジメントの責任者。役職離脱後は、直接の担当組織や部下を持たず、組織マネジメントを行わない高度専門職やスタッフ職に就くことは妨げない(金額)©株式会社プライムコンサルタント 禁無断転載役割給の役割給の上限・下限上限・下限イメージイメージⅥ(部長級)Ⅵ(部長級)Ⅴ(課長級)Ⅴ(課長級)Ⅳ(係長級)Ⅳ(係長級)Ⅲ(主任級)Ⅲ(主任級)Ⅱ(非役職)Ⅱ(非役職)Ⅰ(非役職)Ⅰ(非役職)役割の違い役割の違い(役割等級)(役割等級)65歳まで正社員だが、高齢者はシニア社員に区分 65歳以降は再雇用制度を適用長長係係旧旧一定年齢〜定年までシニア社員として、役割を見直し待遇を下げる・役職定年等による責任役職の離脱を厳格に実施する・シニア社員の期間は退職金増加を半減させる等の措置も可能部長モデル部長モデル課長モデル課長モデル係長モデル(標準評価)係長モデル(標準評価)契約更改契約更改60歳65歳正社員、シニア社員、再雇用ともに同一の役割給体系を適用責任役職を離脱→専門職へ責任役職を離脱→専門職へルル係長モデル(低評価)係長モデル(低評価)主任モデル主任モデルデデモモシニア社員シニア社員雇用確保措置就業確保措置就業確保措置雇用確保措置役割・貢献度に基づく弾力的な賃金待遇(対象者を限定)(対象者を限定)定年後再雇用賃金(ジョブ型賃金待遇)同一労働同一賃金に抵触しない設定(年齢)70歳

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