エルダー2023年10月号
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両立支援は社会・企業・個人にとってメリットがある政府の取組み両立支援とは、「両方とも支障なく成り立つように支援すること」をいいます。本稿では、政府や企業が取組みを促進している、仕事と育児・介護の両立について取り上げたいと思います。まず、個人の事情ととらえられがちな「仕事」と「育児・介護」について、政府や企業がなぜ両立を支援する必要があるのかについてみていきます。「今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会報告書」※1に両立支援に取り組む意義について記載があります。そのなかでは、「少子高齢化により人口減少が加速化するなかで、社会経済の活力を維持・向上させるためには、生産性の向上を図るとともに、多様な人材が働き続けられることが必要」としています。なかでも離職理由として大きい育児や介護の事情が発生しても、労働者の希望に対応しつつ就業を継続できる制度や環境整備といった両立支援を行うことで、社会や企業としては労働力の確保、本人としては望むキャリア形成ができるとしています。政府や企業が両立支援を推進することは、出生率の減少(2022〈令和4〉年で過去最低)、生産年齢人口※2の減少(1995〈平成7〉年をピークに毎年減少)や価値観の多様化(家庭事情・年齢に関係なく働きたいなど)といった現状を考慮すると、社会・企業や本人のいずれにも大きなメリットがあるといえます。てみていきます。政府としては、「関連法」、「認定制度」、「助成金」の三つの観点から両立支援を推進しています。関連法については、「育児・介護休業法」が1991年に成立していますが、2021年6月にさらに両立支援を推進する改正を行っています。おもな改正点として、男性の育児参加を後押しするために「産後パパ育休(出生時育児休業)制度」が創設され、1歳までの育児休業とは別に産後8週間以内に4週間(28日)を限度として2回に分けて休業できるようになりました。また、育児休業を取得しやすくするために、原則1回までしか取得できなかった1歳までの育児休業についても、男女ともそれぞれ2回まで取得することが可能となりました。する動機づけを図るために、おもに次のような認定を行っています。・えるぼし認定…女性の活躍促進に関する状況な次に、政府と企業の具体的な取組み内容につい認定制度については、企業に両立支援を推進どが優良な企業を認定する制度。認定の段階は2023.1048株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之 人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。※1 厚生労働省『今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会報告書』(2023年6月)※2 生産年齢人口……生産労働を中心となって支える15歳から64歳の人口第39回「両立支援」■■■■■■■■いまさら聞けない人事用語辞典

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