猿■■酒■■こそ不老長寿の大ヒント2023.1050食文化史研究家●永山久夫359日本各地の山国には、古くから「猿酒」の伝説があり、これが面白いのです。山奥に生息する猿は、秋になると満月の夜に、よく熟した山ブドウを木の穴に詰め込んで発酵させ、次の満月の夜にやって来て、酒盛りをするというものです。満月の明るい夜を選ぶのは、時間の目印にするためで、1カ月くらいでちょうど飲みごろになるそうです。その天然発酵の酒を飲むと、不老長寿まちがいなしと伝えられていますが、猿に見つかると殺されてしまうというから恐ろしい酒です。たしかに、よく熟れた山ブドウのように、甘味の強い果実でしたら、集めて木や岩の穴などに入れてつぶし、放置しておくだけで、野生の酵母が付着して自然に発酵し、アルコールになります。事実、いまから3000年ほど前の縄文遺跡から出土した樽型の土器の底からは、山ブドウの種子が発見されています。縄文人が■ブドウ酒■をつくって、楽しんでいたのではないでしょうか。ブドウというと日本では山梨県が有名ですが、平安時代から栽培がはじまったという説があり、江戸時代の『本■■朝■■■食■■■鑑■■』には、「甲■■州■■■(山梨県)のブドウが味もよく、量的にもたくさん江戸の町で販売されている」と記されており、秋になるとよく食べられていたようです。ブドウはヨーロッパやエジプトなどでは5000年以上も前からつくられており、世界最古の栽培果実といわれています。日本には、先ほど申しましたように、平安時代に中国を経由して入ってきたようです。猿酒のように、皮ごと発酵させる赤ワインには、抗酸化成分のレスベラトロールと呼ばれる成分が多く、これがいま世界中で■不老長寿のサプリ■として脚光を浴びています。私たちの体の細胞の命を延ばす「サーチュイン遺伝子」を活性化させて、長寿に役立つという説が出てきたからです。特に、黒紫色のブドウの皮に豊富に含まれていることが分かっています。ブドウを上手に食べて人生100年時代を楽しみましょう。満月の夜の猿酒うましレスベラトロールで不老長寿FOOD日本史にみる長寿食
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