エルダー2023年10月号
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し、うまく技能を継承できるように、高齢社員と若手社員のコミュニケーションに着目した内容のガイドラインになっています。平田 たしかに技術の進歩が著しい業界ですが、レガシー分野の技術が必要とされる部分もあります。細分化される前の総合的な知識・スキルやものの見方を持つシニアが活躍できる場面もあるのです。一方で、先ほども触れましたが、元々技術を持っていた人がマネジメント職に変わったものの、役職定年でマネジメント職を外れ、その後、どのように活躍するのかが大きな課題になっていました。そこで、ガイドラインの策定にあたり、直近のキャリアにとどまらず、高齢者がそれまでつちかってきたスキルと会社や職場が必要とするスキルをマッチングさせる「〝使えるスキル〟発見法」を提案しました。これは、会社や職場の課題をリストアップし、そのリストからシニア社員が自分が解決できると思うものを探し、その解決策と根拠を提示。シニア社員の提案をふまえて、その課題解決に必要なスキルや知識をシニア社員が保有しているかを会社が検討することで、使えるスキルを明示化します。一方、不足しているスキルや伸ばすべきスキルについて考えることで、シニア社員が活躍するために必要なことも明らかになります。平田 今後は各企業が勝ち残っていくための経営戦略や、会社や職場の課題解決と高齢者の活躍をどのように結びつけていくか、高齢者を戦力化するという視点が重要になります。これまでは年金支給開始年齢までの収入の支援という側面が少なからずあったと思いますが、企業がいっそう発展していくための生産性向上や新しい商品・サービスの開発に向けた重要な戦力として、高齢者を活用していく流れが強くなっていくでしょう。はい、その通りです。いずれにしても、平田 かで使える要素はあっても、更新が必要であったり、あるいは新たな技術を習得するなどでリスキリングも必要でしょう。ただし、これまで企業は中堅・シニア層の能力開発支援に積極的ではありませんでした。本事業の実態調査では、どの産業においても「シニアに活躍してもらうことにメリットがある」と、ほぼ100%の企業が回答する一方で、「シニアの雇用推進には課題がある」と答えていますが、実際に課題解決のための取組みを実施している会社は非常に少ないのです。シニアに本当に活躍してもらいたいと考えるのであれば、自己啓発支援や能力開発支援がこれからはきわめて重要になると思います。いままでつちかったスキルや経験のな―電子デバイス産業などは、進化が速いイメージがあります。シニアが活躍できる余地もあるのでしょうか。―「〝使えるスキル〟発見法」は技術職にかぎらず、事務系シニアや元マネジメント職の活躍にも有効に思えますね。りますか。―戦力化するにはリスキリングも必要にな(インタビュー/溝上憲文撮影/中岡泰博)シニア社員は知識・スキルのアップデートを会社はシニアの自己啓発・能力開発の支援を2023.104「産業別高齢者雇用推進ガイドライン」はこちらからご覧になれますhttps://www.jeed.go.jp/elderly/enterprise/index.html 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社政策研究事業本部 経済政策部 主任研究員平田 薫さん

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