エルダー2023年10月号
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コンテストへの出品が技能向上の転機に創業者の土屋國男さんは、職人の手仕事を活かすことでランドセルの高付加価値化を実現したことなどが評価され、2022(令和4)年には「現代の名工」に選出された。1965(昭和40)年、自宅内の11坪の工房で創業。「お客さまに満足いただける、品格のある製品をつくるために、材料や製法にこだわってきました」と土屋さん。納品された材料に納得できないときは、仕入れ先から「ほかではみんな使っているよ」といわれても満足できる材料に取り替えてもらうことも。そうした努力の積重ねが、消費者からの信用につながっていった。「神は細部に宿る」といわれるが、土屋さんのこだわりも細部にまで行き届いている。その象徴といえるのが、ランドセルの角に施される「菊寄せ」という加工だ。ギャザーを均一に寄せることで、花びらのように美しく仕上げてある。また、ミシンで縫う位置や糸の太さ、ピッチにもこだわり、例えば縫い目の位置は端から4・5㎜などと細かく決められている。0・5㎜違うだけでも、見た目の印象は変わってしまうという。こうした土屋さんのこだわりが、同社の職人たちにも受け継がれている。土屋さんは15歳のとき、かばんメーカーに就職。ランドセルの資材担当として、材料をそろえて外注先に届ける仕事に約12年間従事した。その間に革の扱いを習得し、1年をかけてランドセルづくりの基本を学ぶと、27歳で独立。当初はひたすら数をこなし、技術を高めることに努めた。転機となったのが、独立4年後、以前勤めていた会社の親方のすすめで参加した技術創作コンクールだった。62工房で職人一人ひとりの仕事ぶりを見て回り、「ここはミシンのピッチが粗いからもう少し細かく」、「おお、上手になったな」などと声をかける「ずっとお客さまに満足いただける製品づくりに努めてきました。お子さまやご家族のうれしそうな姿を見ると、よい仕事だなと思います」

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