エルダー2023年11月号
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当時から、この上限設定について、そもそも有効としてよいのか、どのような意味があるのかという点が論点になっていましたが、近年、この論点に関連する裁判例が現れています。2東京高裁令和4年9月14日判決(日本通運〈川崎・雇止め〉事件)は、有期労働契約の上限設定に関して、労働契約法第18条を潜脱する目的を有したもので、無効であるという主張が行われた事件です。そのほか、労働者の自由な意思が確保された状態での合意によらなければ、更新上限を設定することはできないという主張もなされています。なお、現在、この事件に対する上告受理申立てがなされており、最高裁による判断がくだされる可能性もあります。高裁判決では、労働者からの主張として、公序良俗違反と自由な意思による合意の不存在がなされており、これらの争点に対する判断がなされました。そもそも、第1審の地裁判決においても、「本件雇用契約締結当初から、更新上限があることが明確に示され、原告もそれを認識の上本件雇用契約を締結しており、その後も更新に係る条件には特段の変更もなく更新が重ねられ、4回目の更新時に、当初から更新上限として予定されていたとおりに更新をしないものとされている」という点を重視して、有期労働契約を締結する労働者の業務については、顧客の事情により業務量の減少・契約終了があることが想定されていたことや、業務内容自体が高度なものではなく代替可能であったことなどから、更新に対する合理的な期待を生じさせる事情があったとは認めがたいとして、労働者の主張を認めない判断をしていました。高裁判決もこれを基本的に維持しつつ、労働者から行われた高裁における追加主張に対する判断をくだしています。その内容は、「労働契約法18条の規定は、…有期労働契約の濫用的な利用を抑制し、労働者の雇用の安定を図ることを目的とするものと解される」としつつも、「同条の規定が導入された後も、5年を超える反復更新を行わない限度において有期労働契約により短期雇用の労働力を利用することは許容されていると解されるから、その限度内で有期労働契約を締結し、雇止めをしたことのみをもって、同条の趣旨に反する濫用的な有期労働契約の利用であるとか、同条を潜脱する行為であるなどと評価されるものではない」として、上限設定それ自体が違法とされることはないと判断しています。これに類似する判断として、最高裁平成30年9月14日判決において、65歳を超えて有期労働契約を更新しない旨の上限を設けていた事案があります。本件では、「被上告人の事業規模等に照らしても、加齢による影響の有無や程度を労働者ごとに検討して有期労働契約の更新の可否を個別に判断するのではなく、一定の年齢に達した場合には契約を更新しない旨をあらかじめ就業規則に定めておくことには相応の合理性がある」として、上限を設定することが高年齢者雇用安定法に抵触するものではないと判断した事例がありましたので、その傾向は変わっていないように思われます。おいても、更新拒絶の理由になるかというと、そういうわけではなく、高裁判決は、「同法はないから、有期労働契約の反復更新の過程で、同条各号の要件を満たす事情が存在し、かつ、最新の更新拒絶が客観的かつ合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、(中略)従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で承諾したものとみなされ」、その結果として、通算5年を超えて更新されることとなる場合には、無期転換申込権を取得することになると判断しています。用者が、一定期間が満了した後に契約を更新する意思がないことを明示・説明して労働契約の申込みの意思表示をし、労働者がその旨しかしながら、上限設定がいかなる場合になお、同法19条の適用に関しても、また、「使更新上限の設定に関する裁判例19条による雇止めの制限が排除されるわけで45エルダー知っておきたい労働法AA&&Q

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