エルダー2023年11月号
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を十分に認識した上で承諾の意思表示をして、使用者と労働者とが更新期間の上限を明示した労働契約を締結することは、これを禁止する明文の規定がなく、同条19条2号の回避・潜脱するものであって許容されないと解する根拠もない」として、更新上限を設けていることのみをもって結論が左右されるのではなく、期待の合理的理由を否定する方向の事情(一要素)として考慮要素になるという整理をしています。このような判断が下されたことと、2024(令和6)年4月1日から施行される労働条件の事前明示に関して、有期労働契約者に更新上限の明示が義務付けられたことは整合性があるといえます。労働者の主張によると、そもそも更新上限を設定すること自体が許容されるべきではないということになりますが、労働条件明示のルールにおいてはむしろ更新がないのであればないと明確にしておくべきという整理がなされたところです。高裁の判断や労働条件明示の位置づけからすれば、基本的には、更新上限を設定している場合には、使用者にとって契約当初に想定していた更新期限の設定としての意味を持つことになります。しかしながら、有期労働契約の更新にあたって、5年間の間に、その際の説明内容の変化や業務内容の変化などが生じる可能性があり、また契約期間管理の状況が杜撰であったりした場合にも、期待の合理的理由は高まる可能性はあり、上限設定さえしていれば、更新を確実に拒絶できるわけではありません。なお、自由な意思による合意が必要との主張に対しては、「本件雇用契約の締結当初から明示されたものであり、しかも、本件雇用契約書及び説明内容確認票の各記載によれば、本件雇用契約の雇用期間は5年を超えない条件であることは一義的に明確であること」や本人には面談のうえ説明されていたことなどから、自由な意思に基づかないで合意されたとの事情があったとはいいがたいとし1高年齢者雇用安定法第9条1項2号において排斥されています。基本的には、最高裁判例などで採用されている労働者の自由な意思が求められる場面は、これまでもすでに成立している労働条件の不利益変更の場面であることからしても、契約成立時点で明示されている更新上限にまでそのまま妥当するものではないといえるでしょう。ただし、契約締結当初ではなく、有期労働契約の更新時に更新上限を追加するような場合には、労働者の自由な意思による合意が求められる可能性は否定できません。て、継続雇用制度について、現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度と定義されています。定年を迎える従業員の継続雇用への意思確認は、どのようにすればよいのでしょうか継続雇用の要件定年後再雇用の希望の示し方について制限を設けていたとしても、希望する旨の意思が示されている場合、客観的かつ合理的な理由および社会通念上の相当性が認められないかぎり、継続雇用に応じる必要があります。Q2従業員が継続雇用を希望するか否かを明確にするために、会社所定の様式で提出することを求めています。定年を迎えた従業員から様式に則した希望が示されなかったのですが、継続雇用を拒否しても構わないでしょうか。2023.1146A

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