エルダー2023年11月号
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ポイントは、高年齢者が「希望」するときという要件が定義に含まれていることから、すべての高年齢者を継続雇用の対象としなければならないというわけではなく、希望者を対象とする制度とされているという点です。とすると、定年を迎える労働者が、継続雇用を希望しているか否かを確認しなければ、継続雇用するか否かを判断できないということになります。そこで、使用者としては、希望の有無を明確化するために、所定の様式などを用意して確認することもあるでしょう。所定の様式を用意することは意思を明確化するためには不合理な制度ではないと考えられますが、その運用方法を誤ると、紛争になってしまう可能性があります。2函館地裁令和4年12月13日判決は、高年齢者雇用の希望について、様式性を厳格に求めたことが一因となって紛争となった事例です。使用者は、定年後の再雇用について、60歳の定年退職者で引き続き勤務延長を希望している労働者は、厚生年金受給開始日の前日までを対象とし、退職日の1カ月前までに所定の書式として「勤務延長願」を作成させるという運用がとられていました。当該事件において、使用者は、ある労働者について、再雇用にあたっては定年退職日のの交付を請求する運用があり、労働者から当該指定の用紙が提出されなかったことや使用者が用意した定年退職を前提とする確認書に署名押印していることなどを理由に、継続雇用を拒否したところ、労働者は、継続雇用を希望していたことを理由として、再雇用の拒否が不当であるとして労働委員会への救済申立てを行っていました。裁判所は、「そもそも、所長は、原告が令和3年1月29日に所長に対し継続雇用の意思がある旨を告げた際、原告に対し所定の勤務延長願を交付しておらず、その後も、原告に対しては勤務延長願が交付されないまま、同年2月24日、労務課の職員から再雇用をしない意向を告げられた」ことや、その後に「再雇用を巡って紛争となったという経緯等を踏まえると、原告が所定の勤務延長願の交付を求めず、また提出することもなかったことをもって、原告に再雇用を承諾する意思がなかったことを基礎付けると評価することはできない」と判断されました。また、様式は異なるものの、労働者が、労働組合または代理人弁護士を通じて再雇用拒否が無効である姿勢を示していたことなどから、再雇用を希望する意思があったものと認定しています。使用者が行っていた運用をそのまま徹底すれば、様式性を満たすことなく示された希望については、使用者にとっては継続雇用の希望を示したものとは認めないという扱いになりますが、裁判所はこれを否定しています。裁判所は、様式性の定めや運用が定着していたとしても、様式外の方法による希望が示されていた事情があれば、継続雇用の希望の意思は示されたものとして取り扱われなければならないという評価をくだしたといえます。また、本件においては、対象の労働者と使用者の間で労働組合における活動内容を背景とした不和が生じており、見方によっては使用者から「勤務延長願」を提供しないことで、継続雇用の様式性を満たせないようにしておくことで拒絶の理由としたというとらえ方もできるような状況となっていました。一的に行うことで、定年後の継続雇用の希望を正確に把握しておくこと自体は不合理ではないとしても、希望の把握方法はその内容に限定されるものではなく、そのほかの方法で希望が示された場合であっても、継続雇用の対象として扱うことが適切です。希望の有無が不明瞭にならないように書面であらためて提出するようにうながすといったことは行ってもよいと考えられますが、所定の様式にこ様式性を求めて、取扱いをできるかぎり統様式性の過度な要求による紛争ええるるよよううにに留留意意すするるここととがが重重要要ででししょょうう。。だだわわりりすすぎぎずずにに、、労労働働者者のの真真意意をを正正確確ににととらら90日前までに労働者が「勤務延長願」の用紙47エルダー知っておきたい労働法AA&&Q

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