エルダー2023年11月号
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食文化史研究家●永山久夫2023.1152360FOOD何歳になっても、「俺の人生これからだ」と唱え、生涯の山坂をニコニコしながら登りたいものです。90歳の山を越えたら、次は100歳の山を目ざせばよいのです。人生の年齢に限界などありませんから、120歳でも、150歳でも、どんどん高い山にチャレンジしましょう。人生の山登りのパワー源として、おすすめしたいのが「きな粉」です。きな粉は、丸大豆を火でいり、食べやすいように粉末にしたもので、餅やおにぎりにまぶしたり、ご飯にふりかけたり、あるいはお菓子の材料に用いたりされてきました。大豆には、100g中に35g強のタンパク質が含まれています。きな粉を食べると、良質のタンパク質が含まれた大豆成分をそのまま摂取できるので、長寿効果を高めることになります。昔から、「生涯現役で、100歳人生を望むなら、きな粉のような大豆製品を食べましょう」といわれています。大豆の健康や長寿をもたらす効果は、経験的に昔から知られていたのです。大豆のタンパク質は、生命体の基本となる細胞の主成分で、体の血となり、肉となるだけではなく、若さを保って長生きするためには欠かせないホルモンや、ウイルス感染などを防ぐ免疫力、さらには、頭脳力と関係の深い神経伝達物質の原料にもなるという、たいへん重要な働きもしています。記憶力や学習能力、情報の処理能力の向上といえば、なんといっても本命はレシチンで、これもまた、きな粉にはたっぷり。レシチンは、脳のアセチルコリンという記憶物質の原料となる成分で、記憶力や発想力の衰え、物忘れを防ぐうえでも役に立ちます。不足すると、神経状態が不安定になるともいわれ、ストレスに弱くなることもわかっています。大豆には女性の老化を防ぎ、若さを保つ女性ホルモンと似た作用で注目されているイソフラボンも豊富。もちろん、男性の若々しさを維持するうえでも大切な成分です。また、ビタミンB1も多く、疲労に強い体づくりに最適です。「俺の人生これからだ」脳の若さを保つきな粉きな粉のパワーで人生の山登り日本史にみる長寿食

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