エルダー2023年11月号
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田■中■■研■■之■輔■■、西■■村■■美■奈■子■ 著/榎■■本■■博■■明■■ 著/朝日新聞出版/プロティアンシフト定年を迎える女性管理職のセカンドキャリア選択男女雇用機会均等法が施行された1986の女性たちが、定年を迎えはじめている。本書は、著者自身の管理職としての経験やフィールドワークのデータ、複数の女性管理職へのインタビューをもとに、管理職として働き続けてきた女性たちのキャリア形成と定年後のキャリア選択に焦点をあてた書籍。いまは女性も「定年」、「セカンドキャリア選択」に向き合う時代になっている。しかし、公益財団法人21世紀職業財団による調査※によれば、50代女性の約4分の1が定年後のキャリアについて、「わからない」と回答している。この背景について、女性には男性のように多くのロールモデルがいない、という事情があると指摘されている。本書は、仕事に意欲的に向き合ってきた女性管理職たちが、働くことを人生においてどう意味づけ、「定年」という大きな環境変化のなかで、キャリアシフトをどう実現してきたのか。子育てと残業、海外出張、差別と偏見などに直面しながら悩み、考え、歩き続けてきた女性たちの軌跡と定年後の選択からいまを生きる人々のキャリア形成のヒントを探っていく。「退職不安」を吹き飛ばす秘訣人生の残り時間が気になりはじめる50代から、60代、70代は、喪失の時期でもあるという。特に60歳以降は、仕事上の役割や職場、経済力、体力、気力、記憶力などさまざまな喪失が押し寄せる。そうした人生の後半で、幸せになれるのはどんな人なのか。どうしたら自分の人生を意味あるものと感じられるのか。本書は、これらを考えるための手がかりや、考え方のヒントを、心理学博士である著者が記した一冊。心の張りのある生活をするために特に大事な要素は、「やりがい」と「居場所」であるという。どちらかひとつでも、ある程度満たされていればよいようだ。ただ、「居場所」をつくるといわれても、どうしたらよいのかわからない人もいるだろう。その場合、行きつけの喫茶店や図書館、美術館・博物館めぐりを楽しむことを居場所としてもよいそうで、「心地よい居場所を持つには、肩の力を抜くことも必要」と著者。また、「社交のむなしさを退職後にまで持ち越さない」、「とりあえず気になることを試してみる」などの言葉に、自然と気持ちが軽くなる内容だ。最終章では先人の言葉や、何歳になっても挑戦を続けた葛飾北斎などの生き方を紹介。高齢期の人生に希望を与えてくれる。(昭和61)年前後に入社した「均等法第一世代」※ 女性正社員50代・60代におけるキャリアと働き方に関する調査(2019年度)千倉書房/2200円979円2023.1156※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します60歳からめきめき元気になる人心理学博士が示す、活き活きとした高齢期を過ごすためのヒント女性に焦点を当て、定年後のキャリア形成を探る

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