(インタビュー/溝上憲文撮影/中岡泰博)多様な人材をマネジメントしていくためには部下の「仕事の動機づけ条件」を知ることが重要50キロを走りました。石田 計画を立てても失敗する人に共通する点は、急にがんばりすぎることです。例えば、「1年後に英語を話せるようになる」という目標を立て、そのために英会話学校に通い、毎日勉強しようとすると、ほとんどの人が挫折します。なぜなら人間は急激な行動の変化を持続できないからです。最初から全速力で飛ばし、しかも途中のステップや習慣化のための環境づくりができていないことが失敗の大きな原因です。行動を習慣化するためには、目標に向かって一緒に行動をする「サポーター」をつくること、もしくは進捗状況をだれかにチェックしてもらうことが有効です。一人でやると挫折しやすいですし、人と一緒にやるのが面倒ならSNSを使って「半年後に資格を取ります」と宣言して、〝後に引けない〟状況をつくるのもよいでしょう。また、まじめな人ほどストイックに勉強に 取り組みがちなのですが、何かを継続するうえで「やる気」に頼るのはよくありません。「人の意志は弱い」という前提に立って行動を設計し、「一つのステップを達成したら自分に〝ご褒美〟をあげる」ことを習慣化するのもよいでしょう。おいしいものを食べる、好きな映画を観に行くなど、何でもよいのです。スモールゴールを多く設定すれば〝ご褒美〟も多くなり、勉強も楽しくなります。石田 を把握することが大切です。その人が「何のために仕事をしているのか」という動機づけをつかむのです。昔はお金と出世がその中心でしたが、いまの若い人は「出世したい」と社員それぞれの「仕事の動機づけ条件」いう人は少ないですし、「残業してまでお金は欲しくない」という人もいます。仕事に対する価値観が大きく変化しており、しかも一人ひとり異なります。人手不足のなかで長く勤めてもらいたいと思えば、その人の価値観に合わせて動機づけ条件を考えていくことが必要でしょう。仕事も学びも一緒で、人を動かすには本人が欲しているものを与えてあげることが肝要です。くはありません。例えば、役職定年になり、給料も下がり、やる気を失っている部下がいるとすれば、時間をつくり、じっくりと話を聞いてあげましょう。そのうえで「助けてください」とお願いをする。本人は「自分のことを頼ってくれている、しょうがないな、助けてやるか」と思うはずです。年上部下は意外とシンプルなコミュニケーションを求めていますし、これも動機づけ条件なのです。一方、年上部下の動機づけ条件はむずかし―自信が湧いてくるお話です。ゴールを設定したら、小さな成功の積み重ねから始めて、行動を習慣化する仕組みをつくるということですね。―リスキリングは本人による自発的な行動の習慣化とは別に、企業が支援していくことも重要です。その一端をになうのは現場の管理職ですが、Z世代から年上部下まで、価値観の異なる多様な人材に対し、いままでのマネジメント手法が通用しない時代になっています。2023.114株式会社ウィルPMインターナショナル 代表取締役社長社団法人行動科学マネジメント研究所 所長石田 淳さん
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