定期的なキャリア面談で上司と対話キャリア支援は価値を創造する社員を育てる研修以外にも、社員の自律的キャリア開発を支援する制度を設けている。その一つが「キャリアアセスメント面談」だ。業務と結びついた目標設定面談やパフォーマンスレビュー面談とは別に、年1回、上司との間でキャリアアセスメント面談を行っている。本人は、「キャリアアセスメントシート」に、職務経歴やこれまでの職務成果、現在アサインされている職務についての認識、今後の希望、習得すべきスキル・知識といった、キャリアの棚卸しとプランについて、あらかじめ記入して面談に臨む。45歳以上になると、定年後のキャリアプランも書き込む。このシートにしっかり書き込めるかどうかが自律的キャリアデザインの第一歩であり、翌年以降は、記入した内容をふり返り、その都度更新していく。そのための「シートの書き方セミナー」も実施している。一方で、上司の面談スキルや、部下のキャリア開発を支援するマインドも、面談の成功のためには重要なポイントとなる。「管理職の責任は、業績を上げるだけではありません。部下のキャリア形成を支援することも、重要な役割です」(茂木人事部部長代理)上司は、部下自身が望むキャリアを目ざすために、具体的に手助けできる知識や権限を持っているとはかぎらない。上司に必要なのは、部下の思いを傾聴し、適切にフィードバックし、伴走するマインドとスキルを持つことだ。部下が年上であれば、さらに強くその姿勢が求められる。そこで、上司向けにキャリア面談のスキルを向上させる研修も実施している。「キャリアデザインは対話がカギです。自らのキャリアビジョンを語り、他者からフィードバックを受けることで、単なる思い込みや願望ではない具体的なプランが描けるようになります。そういうコミュニケーションがあたり前のようにできる組織風土を目ざしています」(茂木人事部部長代理)「キャリア自律開発支援パッケージ」の施策のなかに、社外交流プログラムや、社外越境体験プログラムがある。社外交流プログラムでは、例えば小規模な地方自治体と期限を決めて交流し、地域課題を議論し、その解決策を提言する活動を行っている。地方行政と大企業では、仕事の文化が大きく異なる面もあるため、交流を通じて互いに有益な刺激が得られるという。プログラムに参加したシニアからは、「いままであたり前と思っていたスキルの発揮が、自治体職員から賞賛され、自分の強みをあらためて認識した」などの声があり、キャリア面での気づきの効果に手応えを感じている。外キャリアコンサルタントへの相談窓口設置、人材紹介会社に登録して求人情報を得られる求人開拓マッチング支援など、多様なメニューを揃えている。ぜここまで手厚い施策を用意するのか。もはや生涯雇用を約束できない時代であることを、社員に理解させるためなのか。茂木人事部部長代理にたずねた。「たしかに、その現実を社員に伝えることは、会社の責任です。しかし、真のねらいは別にあります。社員には、目の前の仕事に埋没するのではなく、つねに視野を広く持ち、時代の変化に合わせて知見やスキルをアップデートしてほしい。そういう社員になって新しい価値を創造しないと、会社の存続・成長は望めません。若手・中堅のみならず、シニアもその価値創造のにない手になってほしい。それが、キャリア自律を重視する会社としての思いです」ほかにも、兼業・副業容認基準の緩和や、社社員のキャリア開発支援のために、会社はな18
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