自身のキャリアをふり返り言語化するキャリアデザインの答えは社員自身の中にある認識がありました。その大前提として、『スキルや意欲のあるシニアに社内で活き活きと活躍してほしい』という願いがあり、実際にキャリア開発支援に関するタスクチームが立ち上がったのが2021年の秋になります。その第一歩として、ミドル世代である50代の社員へのキャリア開発支援を行う、という流れができました」と齋藤専任課長はふり返る。企画開始当初はコロナ禍のため対面での実施はむずかしく、研修もそれに続く面談もすべてオンラインで行われた。北海道から沖縄県、さらには海外を含め遠隔地にある拠点を同時につないで実施できるというメリットを活かし、当時55~58歳までの社員400人以上を対象に、生産性も高く効率よく実施することが可能となったという。同社では今後もフルオンラインでこの取組みを継続していく予定だ。セミナーの対象者は管理職と一般社員の二つに分けられ、管理職は3時間半の研修を3回、一般社員は3時間半1回で完結する。「60歳以降になって仕事上のギャップが特に大きいのが、やはり管理職です。時間をかけて手厚く取り組むために3回行いました。まずは自分のこれまでのバックボーンを一回ふり返って、『自分がどんな仕事をしてきたのか』、『どんなことが好きだったのか』、『本当にやりたいことは何だったのか』ということを思い出してもらうことからスタートし、最後に『60歳を超えた自分が社内外で活き活きと活躍するためにはどうしたらよいか』というアクションプランを各人が立てるまで支援をするという内容です」(上田専任課長)企画内容は、同社ですでに実績のある外部講師からの提案を、齋藤専任課長や上田専任課長を含む実務担当チームを中心として、ブラッシュアップして決定していった。実際のセミナーは、「60代の自分は何をしていたいか」から逆算し、そのために「いまの自分は、どんなことに手をつけたらよいのだろうか」という自省や、あるいはグループミーティングで「こういう道もある」、「ここだけは譲れない」ということをほかのメンバーから聞くことで、気づきをうながすなどのステップをふんで進められた。こうして各自がキャリアの棚卸しを行い、キャリア・アンカーを見いだしていくことを支援するのだが、「受講者のほとんどは、これまでキャリアについて考えてこなかったため、自分の思いを言語化することに苦労している人が多かった」と上田専任課長は語る。「齋藤さんや私を含めてですが、ミドル世代にとって自分自身のキャリアプランというのは『重要だけれど緊急ではない案件』なので先延ばしにしていたのだと思います。ただ50代になると徐々に緊急度合が増してくるので、やはりこのタイミングで一度自身のキャリアと向き合うということは必要なことだったと思います」れ、グループミーティングなども活用しながら、お互いに対話を通して、新たな気づきがあればそれを取り入れたり、逆に他者への気づきも与えられるよう、各自の自律性を重視した内容となっている。「そうすることで、より深く自分を理解でき、自分の将来についても明確にすることができたと思います」と齋藤専任課長は自律的なキャリア支援の効果を語る。んは会話する機会がない部署の社員同士となるケースが多い。今回の研修でグループミーティングを通して関係が深まり、セミナー以降も交流を続けるなど、社内コミュニケーションが活性化するという副次的な効果もあったという。研修は一方的な講義とならないよう配慮さまた、受講者は同世代ではあるものの、ふだ研修後に行われるキャリアデザイン面談は、20
元のページ ../index.html#22