しなやかに自分のキャリアを考える社会を目ざしてか?」と具体的な講座を示す場合もあるそうだ。このように面談のなかでも具体的なリスキリングの内容や、会社が準備している教育支援サービスなどを説明することで、社外セミナーの受講者における50代社員の構成比が、2022年と比べて今年は約2倍になるなど一定の成果を上げている。同社が現在紹介している講座数は通信教育で約300種類あり、通信教育ではそれなりの期間を拘束されるため伸び率は小さいが、最近はeラーニングや、手軽な動画学習などの比較的ハードルが低くすきま時間で学べるコンテンツの申込者が増加しているという。人気の講座は語学関連だが、ミドル世代ではデジタルスキルを習得したいという意欲も高い。「私たちの世代はデスクに電話機があって、その横にメモ帳があったころに入社してきました。そのため1人にパソコン一台という時代になっても、どうしてもパソコンと距離を置いてしまい、若いときにパソコンをやらなかった人たちが管理職になり、いまは部下や若い後輩などにパソコンが必要な業務を頼んでいる状態が考えられます。しかし、再雇用になって立場が変わるとこれを自分でやらなければならない。そうなったときのために、いまのうちにパソコンスキルを身につけておきたいというニーズは大きいのだと思います」(齋藤専任課長)同社では今後、デジタルスキルの向上だけでなくコーチングスキルなどのリスキリングについても幅広く支援していく予定だという。同社では現在、53~55歳の社員470人を対象に、次のキャリア開発支援を進めており、最終的には50代になったすべての正社員が支援を受けられるようにしたいという考えを持っているという。そこでお2人にキャリア開発に関する今後の展望を聞いた。「ミドル世代になって、『いままでこの仕事をしてきたので、このまま60歳以降も経験を活かして同じ仕事を!』とうまくいけばよいのですが、そうではないときに苦労をするのは社員自身ですし、家族や、会社にとっても不幸です。『いまは必要ない』と思っている方にも、研修を通じて『こういうことを学んでみようかな』と気づいていただけるような内容へ充実させていきたいと思います」と、上田専任課長は研修のさらなるブラッシュアップを目ざしている。「リスキリングによってできることを増やすことも大切ですが、『つねに新しいことに挑戦し続ける』という意欲を持ったミドル世代を増やしたいと思います。若い世代の人たちから見たときに、何も挑戦しないミドルと、『やったけどだめだった。次はこれをやってみるよ』と話すミドルがいたとして、どっちを見てこの会社に残りたい、この会社でがんばりたいと思うかです。その先にシニアが活き活きと活躍する会社があり、そういった環境のなかでこそ若手も活き活きと働けるのではないでしょうか」と、齋藤専任課長は、シニア世代に技術や知識の伝承を期待するのはもちろん、プラスアルファとして新しいことに試行錯誤して挑戦していく姿勢を求めている。が、本人はもちろん、会社にとっても社会にとっても必要なことですので、自律性を持って自分のキャリアを決定できるような支援をしていきたい。特にこれからは仕事と介護の両立や、仕事と病気の治療の両立が必要になる方も増えてくると思います。そういう場面に直面したときも、『自分にとって最適な選択は何なのか』ということを自律的に、しなやかに考えられるような支援を今後もしていきたいです。また、当社内だけでなく『それがあたり前』という社会になればよいと思います」と今後を見すえている。そのうえで、「活き活きと働いてもらうこと22
元のページ ../index.html#24