きや失敗に終わったときのように結果が出た後に使われるなど、アンバランスになっていることが多いようです。相手の行動をうながす「きっかけ言葉」のポイントは「かみ砕くこと」です。言われた相手が何をしてよいかがわからない言葉は「きっかけ言葉」として機能しません。例えば新入社員が「新規事業案、つくっておいてね」と言われても、何をどう進めてよいかわからず行動ができませんよね。これはじつは、部下から上司に対してもそうです。数十ページにわたる書類をドサっと渡されて「◯◯さん、一応ご確認お願いします」と言われても、忙しい上司は困ってしまいますよね。「◯◯さん、この書類なのですが、特にこの点とこの点は課題になるかもしれないので、一応ご確認いただきたいのですが…」のように、相手が行動に移しやすい「きっかけ言葉」を使うことは有用です。私自身「この書類ですが、ご覧いただけたら5分で確認できますので…」と言われて「じゃあ、先にやっておこうかな」と、強力に行動をうながされたこともあります。このように「相手のレベルや状況に合わせてかみ砕く」ことで、効果的な「きっかけ言葉」を使うことができます。相手の行動を受けとめる言葉が「おかえし言葉」です。「きっかけ言葉」によって行動をとったとしても、行動の後に感謝の言葉やフィードバックによる「受けとめ」がないと、「これでよかったのかな?」、「次回もやったほうがよいの?」と不安や迷いがわいてきます。「おかえし言葉」で、相手の行動そのものや進■・結果を受けとめることが、組織やチームのなかに望ましい行動を増やす秘訣なのです。「おかえし言葉」のポイントは「即座」と「承認」です。行動をとった相手に、できるだけ早く、行動に対する承認をすることで、効果的な「おかえし言葉」になります。目覚ましい成果・よい結果が出たときだけ承認をするリーダーや管理職がいますが、行動そのものを承認することや、その行動の持つ意味・意義を伝えることで承認ができます。「すぐにやってくれて助かったよ」、「朝早く出社してオフィスの整理整頓してくれていたね」、「今回のプロジェクトは全社で参考になりうる事例だね」など、行動に対して即座に「おかえし言葉」で受けとめましょう。ときに、「でも、承認しようにも承認するところがない部下もいるんだよ」という意見が聞かれます。じつは「承認」には「①成果、②行動、③成長、④存在」の4種類の承認があります(図表2)。一般的に多く使われる「①成果承認」は、成果や結果を認めることです。結果が出る前の「行動そのもの」を承認することが「②行動承認」、相手の過去と現在を比較して成長を認めることが「③成長承認」、ここにいることそのものを認めることが「④存在承認」です。①成果承認③成長承認②行動承認④存在承認2023.1242出典:『心理的安全性をつくる言葉55』(飛鳥新社) イラスト/やまね りょうこ図表2 4つの承認を使い分ける
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