育児介護休業にともなう降格に関する裁判例います。質問にあげられているような部署の廃止にともない役職を喪失することは、間接的には降格といえるでしょう。しかしながら、長期であれば2年間程度の産休および育休となり得ることからすると、企業内での事情を加味して組織変更を行うことすら選択肢から奪われるというのは、企業にとっては許容しがたいということになるでしょう。高裁平成26年10月23日判決において、妊2最娠中の軽易業務への転換を契機として降格させる措置について、原則として禁止される不利益取扱いに該当するとしつつ、「当該労働者が軽易業務への転換及び上記措置により受ける有利な影響並びに上記措置により受ける不利な影響の内容や程度、上記措置に係る事業主による説明の内容その他の経緯や当該労働者の意向等に照らして、当該労働者につき自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき、又は事業主において当該労働者につき降格の措置を執ることなく軽易業務への転換をさせることに円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって、その業務上の必要性の内容や程度及び上記の有利又は不利な影響の内容や程度に照らして、上記措置につき同項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するときは、同項の禁止する取扱いに当たらない」という判断がされたことがあります。当該事件においては、管理職から非管理職へ変更されたという処遇変更について、一時的な措置ではなく、管理職への復帰を予定していない措置であること、本人の意向に反するものであったこと、管理職への復帰の可否などについて説明がなされていなかったことなどをふまえて、労働者の自由な意思に基づいて承諾したものと認めることはできないとされています。また、趣旨および目的に実質的に反しないと認められる特段の事情に関しても、軽易業務へ転換することの業務上の必要性が不明瞭であることや、内容や程度が相当なものであったといえるか検討されていないとされて、高裁へ差し戻された結果、特段の事情は認められないという結論に至っています(差戻審:広島高裁平成27年11月17日判決)。近年、同様の基準にしたがって判断された裁判例があらわれました(東京高裁令和5年4月27日判決〈アメックス《降格等》事件〉)。基本的な考え方として、不利益取扱いが禁止されている範囲については、労働者の自由な意思による承諾か、もしくは、趣旨および目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するときでなければならないとした点は、最高裁判決を踏襲しています。中に部署が廃止された結果、役職を解かれたことについて、具体的な賃金への影響はないように配慮されていたにもかかわらず、禁止される不利益取扱いに該当すると判断されたことです。その理由としては、「基本給や手当等の面において直ちに経済的な不利益を伴わない配置の変更であっても、業務の内容面において質が著しく低下し、将来のキャリア形成に影響を及ぼしかねないものについては、労働者に不利な影響をもたらす処遇に当たるというべき」ということがあげられています。利益に対しても、不利益取扱いに該当するという判断がされていることから、役職を解くにあたっては慎重な配慮が必要になると考えられます。具体的には、役職を解くことに対し自由な意思による同意を得るために説明を尽くしていくことや業務上の必要性が高度に求められることには留意する必要があるでしょう。抽象的であり、今後の裁判例の蓄積を待つ必要がありますが、当該事件においては復職後の業務の質が著しく低下している(具体的には、部下がおりその管理などを任せられていた営業職がテレアポのみを担当する業務に変当該事件における特殊な点としては、育休ここでは、キャリア形成という抽象的な不将来のキャリア形成への影響という点は、45エルダー知っておきたい労働法AA&&Q
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