エルダー2023年12月号
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最終的に会社が解雇を実施し、その有効性が争われました。会社は、高度な職位に就任していた(会社内の役職はヴァイス・プレジデント)ことから、その処遇も高待遇であり、整理解雇の四要素(①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③被解雇者選定の妥当性、④手続の妥当性)を形式にあてはめて判断することはそぐわないと主張しましたが、裁判所は、これを受け入れることなく、整理解雇の四要素が総合的に考慮して判断するという基準を示しました。そのため、高度な職位にいるとしても労働者である以上は、整理解雇の四要素が考慮されるという点に変わりはありません。しかしながら、高度な職位であったことや高額な報酬を得ていたことなどの事情は、解雇回避努力の内容や程度などを検討するにあたっての考慮要素として斟■酌■することができるという判断も示されており、一般的な労働者の整理解雇と比較すると緩やかな基準で判断されることになります。実際の事例では、原告に対して会社からほかの職種などへの希望などを聴取し、合計四職種の提案をしてもこれに応じなかったので五つ目の職種を提案するなど行っていたところ、同程度のポジションの提案がなかったことをもって十分な措置が取られていないといった反論がなされていたものの、裁判所としては、そのような提示を求めることは原告■■のために特別な措置を取ることを求めるに等しいもので、「会社都合で職位を消滅させたとはいえ、他の従業員との公平性を害しかねないそのような特別措置を取ることまで信義則上要求されると解することはできない」と判断し、原告の要求は一蹴されています。会社からの提示されたポジションに応じなかったことについては、「原告は、被告会社が取り組んでいた原告の解雇回避のための努力に真摯に向き合おうとしなかったものであり、会社都合により職位を失ったという事情を考慮したとしても、極めて不誠実な態度であったと言わざるを得ない」という評価に至っています。そのほかにも、部署の定員数を増加させたり、新たな部署の設立が可能であったなどの主張もなされていましたが、「業務上の必要性があるとはうかがわれない本件においてそのような措置を取るべきであるといえないことは明らかである」とされており、部署の廃止などに関わる業務上の判断については、会社側の事情が優先される結果となっています。継続雇用時の判断との関係3継続雇用を控えることと、先述の裁判例における判断の関係性については、継続雇用をしないためには、解雇事由を充足していることが必要という点で連結することができます。と同程度の待遇や業務内容を用意できないという場面は容易に想定できます。そのような場合において、会社としては定年後に期待する役割や条件を十分に提示しておくことが重要です。基本的に、定年直前の状況というのは高待遇な状態になっている可能性は十分にあり得ることから、提示した業務内容や労働条件に対して、これに応じることなく拒絶されるような事態が生じれば、継続雇用ができないという判断もあり得るということになるでしょう。合には、紹介した裁判例との親和性は高くなりますが、業務内容の変更と待遇の低下という意味では、定年後の再雇用との考え方との関係では、少なからず影響がある裁判例であると考えられます。いかなる場合であっても、定年後の働き方について提示できる業務内容や条件を十分に提示しておくことは必要であるという考えは持っておくべきでしょう。定年後再雇用においても、従前の役職などなお、元々の労働条件が高待遇であった場47■エルダー知っておきたい労働法AA&&Q

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