ワークシェアリングの活用により高齢者が長く働ける環境は実現できるで、5人未満の小規模零細企業も多いのです。「令和4年就業構造基本調査」(総務省)によると、これは全国平均ですが、5人未満の事業所に勤務する65歳以上の就業者の勤続年数は30年以上が半分以上を占めています。20年以上で見れば6割を超えるなど零細企業ほど長期勤続者の高齢者が多いというのが現状です。また国勢調査(2020年)の60歳以上の正規従業員の比率を見ると、北東北は男性も女性も東京都や全国に比べて正規比率が高い傾向にあります。例えば青森県の60〜69歳層の男性の正規比率は67・7%、70〜74歳層でも43・7%です。女性は同じ層で31・1%と20・6%ですが、これも全国平均よりも高い。その背景として中小・零細企業が多い地方では、若い人が採用できないので長く勤めてきた人を大事にし、65歳以上も正社員として働いているのではないかと推測されます。大矢 生らの研究チームが1990年代に、「何が高齢者の就業を促進するのか」という実証分析をされています。そのなかで高齢者の就業をうながす要素として、「健康であること」、「高学歴であること」、「都市居住であること」の三つをあげています。都市部ではいろいろな仕事があり、働き方が多様で選択肢の幅が広いので、都市居住の高齢者は就業しやすいというのが理由です。しかし最近は違うので慶應義塾大学の塾長を務めた清■家■篤■先はないかと考えています。労働力不足が高まるなかで、若者の県外流出が進む現状において、むしろ地方に住んでいる高齢者の就業率が高くなる傾向に変わってきているのではないかと思っているのです。大矢 通院のために休みたいということもあるでしょう。高齢者の雇用を推進するための一つの方法がワークシェアリングです。例えば、あるリフォーム関連の会社では、若者が採用できないだけではなく、高齢社員からは「もう年だから引退したい」といわれて困っていたそうです。そこで「1日8時間ではなく、3時間でも働けませんか」とお願いしたところ、複数の高齢社員から手があがり、1日の作業を引き継ぎながら、3人でこなすようにしたそうそうですね。70代前半はがんばれても、―東北地方では若者が県外に出ていく一方、高齢者が長く働き続けることで地場の企業を支えているという構図ですね。あるいは70歳を超えてもフルタイムで働くのはむずかしいのではないでしょうか。―ただ、高齢者にも限界があります。65歳、■■3■エルダー70代後半になると身体的にもきつくなるし、
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