しなくても定められた業務を遂行していれば報酬は支払われますが、請負契約は仕事が完成しないかぎり報酬は支払われません。契約内容によっては報酬が支払われない時期もあるという点が従業員と異なります。二つめは、従業員には労働条件に関する最低条件などを定めた労働基準法が適用されますが、フリーランスは企業と雇用契約を結ばず労働者に原則該当しない※4ため、労働基準法の適用対象外となる点です。例えば、従業員については時間外労働や休日についての規制が存在しますが、フリーランスについては規制対象外となるため、業務が終わらなければ何時間でも働くことや、時間単価が最低賃金を下回ることもありえます。三つめは、加入できる公的保険の違いです。健康保険について従業員は企業が属する健康保険組合に加入し、保険料の支払いは企業と本人で折半です。フリーランスは都道府県・市区町村が運営する国民健康保険への加入が基本で、保険料も全額自身で支払う必要があります。年金保険については、従業員は国民年金に上乗せする形で厚生年金に加入となりますが(一部適用外あり)、フリーランスは法人化しないかぎり厚生年金には加入できません。将来受け取れる年金を上乗せしたい場合には国民年金基金に加入するなど、自身で対応をとる必要があります。また、従業員は雇用保険(労働者が失業、休業した場合に手当が支給される)や労災保険(労働者の業務上の事由または通勤による労働者の傷病等に対して必要な保険給付が行われる)の対象ですが、フリーランスはともに対象外(労災保険については特別加入あり)です。これまで見たように、フリーランスは労働者保護制度の適用対象外となるなどの課題も多く、政府も実態把握とその対応を進めてきました。フリーランスの諸問題が浮き彫りになった「フリーランス実態調査結果」※5の資料を参照すると、労働者保護制度の適用以外にも課題が見えてきます。一つの課題は、収入の不安定さ・少なさです。同調査のなかで収入が少ない・安定しないという回答は6割、フリーランスの年収として最も多いのが本業で200万円以上300万円未満(19%)、副業で100万円未満(74%)という決して高いとはいえない年収です。次に課題となるのが、取引先とのトラブル経験がある者37・7%(トラブル内容として、「発注の時点で報酬や業務内容などが明示されなかった」37・0%、「報酬の支払いが遅れた・期日に支払われなかった」28・8%)のうち、トラブルについて「交渉せずに受け入れた」が21・3%、「交渉せず、自分から取引を中止した」が10・0%という、発注側にかたよった力関係です。的に働く環境を整備するために、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」が2023年5月12日に公布(2024年秋ごろ施行予定)。同法により、以下の点が義務となりました。①書面等による取引条件の明示②報酬支払期日の設定・期日内の支払③禁止事項(フリーランスに責任がないのに発④募集情報の的確表示⑤育児介護等と業務の両立に対する配慮⑥ハラスメント対策に係る体制整備⑦中途解除等の事前予告462万人というかなりの数に上ります。70歳までの就業機会の確保の選択肢として「70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入」もあり、フリーランスは今後も増えていくことが想定されます。そのため、フリーランスの保護に関する制度や施策のいっそうの拡充が望まれます。これらの状況を改善し、フリーランスが安定注した物品等を受け取らない、発注時に決めた報酬額を後で減額すること等の禁止)日本のフリーランス人口は、2020年時点で次回は、「最低賃金」について解説します。フリーランスの課題と対応51※4 雇用契約を結んでいなくても、業務内容や遂行方法、勤務場所と勤務時間などについて具体的な指示や拘束を発注者側から受けているなど、法律上の「労働者」にあたる(労働者性がある)場合もある※5 内閣官房日本経済再生総合事務局『フリーランス実態調査結果』(令和2年5月)エルダー■■■■■■■■いまさら聞けない人事用語辞典
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