食文化史研究家●永山久夫2023.1252FOOD361日本では古くから、「赤」は不老長寿や永遠の美しさ、悪霊を追い払うなどのパワーが強い特別な色として神聖視されてきました。神様をまつる神社の鳥居が赤く塗られているのも、永遠の若さをお祈りするためといわれています。小豆などの赤色の食材も、不老や厄除けの食材として用いられてきました。赤い色をした縁起のよい食べ物といえば、なんといってもサケ。お正月の祝い魚や神様へのお供えとして欠かせないのは、不老長寿に役立つからです。サケ特有の赤い色は、アスタキサンチンという抗酸化成分です。体細胞の酸化を防ぐパワーが強力で、若返りに効果が高いという評価があり、世界的に人気を集めています。サケは、アイヌ語で「カムイチェプ(神の魚)」と呼ぶそうですが、まさに神秘的なパワーを身につけた魚だったのです。サケは、神様からの贈り物という考え方がありますから、頭から尾まで残すことなくいただかないと申し訳がたちません。実際に、塩サケは頭部も皮も、骨もえらも、さらに尾まで脂ののりがよく、サケ特有のアミノ酸が豊富なために、どこを口にしても美味なのです。しかも、不老長寿に役立つ成分もたっぷり。現代は、「若返り」にどんどんチャレンジして、80、90歳になってもバリバリ仕事をこなして長寿を楽しむ「人生100年時代」。その後押し食のトップがサケといっても決して過言ではありません。サケには、ほかにもアミノ酸バランスのよいタンパク質や脂質、ビタミンA、B1、B2、D、E、カルシウム、マグネシウム、亜鉛などがバランスよく含まれています。そして、老化を防ぐといわれる抗酸化成分のアスタキサンチンが含まれているのに加え、血液のサラサラ効果を高めるEPA(エイコサペンタエン酸)や、記憶力を高め学習能力を強くするというDHA(ドコサヘキサエン酸)も多く、サケをコンスタントに摂ることによって、認知症予防に役立つことも報告されています。情報化や長寿時代にはありがたい栄養成分です。たくさん摂ってこの年末を乗り切りましょう。赤い身のパワーアスタキサンチンの長寿効果サケはトップクラスの長寿食日本史にみる長寿食
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