「大企業ではおそらくやらない」とされる取組厚生労働省の令和4年度「過労死等の労災補償状況」によると、精神障害に関する労災請求件数と支給決定件数が、前年度に続き過去最多を更新した。また、働く人の半数以上が仕事に何らかの強いストレスや不安を感じているという調査結果もあり、職場におけるメンタルヘルス対策の重要性がさらに増している。本書は、職場のメンタルヘルスにかかわるすべての人に向けて、適切な精神医学の知識をベースにして解説された入門書だ。現場に即した内容として、産業医、産業保健スタッフにアンケート調査を実施し、結果をふまえて広範かつ体系的に問題を取り上げたという。執筆は、産業医として活動している精神科医が中心となり、Q&A形式で簡潔かつ平易な文章で説明。編集には、産業看護職、弁護士も加わり、多面的な視点で問題に対応している。高齢者雇用と関連する内容では、「どのようなときに認知症を疑って受診勧奨したほうがよいか」という質問があり、職場で認知症を疑う症状や、認知症のような症状を呈する疾患について解説し、対応の仕方にも触れている。職場のメンタルヘルスケアにかかわる人や学びたい人などに、大いに役立つ入門書である。鈴■■木■康■■仁■■ 著/人材を磨く経営職場のメンタルヘルスケア入門中小企業は社員の個性を活かして伸ばす2023(令和5)年夏に日本商工会議所・東京商工会議所が実施した中小企業の人手不足に関する調査結果によると、人手が「不足している」と回答した企業の割合が68・0%に達し、調査を開始した2015(平成27)年以降、最高となった。人材確保や育成に悩みを抱えながら、どのように解決したらよいのか、具体的な方法がわからないという中小企業の経営者は多いだろう。本書の著者は、2002年に物流商社を創業し、20年間で年商100億円、社員300人のグループへと成長。本書は、中小企業における人材採用と人材育成の基本的な考え方を整理したうえで、著者が実際に行ってきた「可能性を秘めた人材の見極め方」や「人材の磨き方」について解説。採用の基準や面接時の取組み、個性を伸ばすための独自のルールや仕組みなど、みが多数披露されている。人材育成は、オンラインで管理し、だれもが自由に閲覧できる日報を活用しているという。また、「上司は部下のためにいる」という考え方をベースにした、独自の組織づくりについても明かしている。人材不足に悩む中小企業の経営者にとって、解決の手がかりが見つかる一冊といえるだろう。※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します編集 淀■■川■■亮■■■・田■中■■克■■俊■■・鎌■■田■直■■樹■・三■木■明■■子■/幻冬舎/1760円編集代表 宮■■岡■■等■■■、医学書院/3740円2023.1256会社を大きく成長させた著者が、人材の悩みを解決するヒントを明かす!職場のメンタルヘルスケアについて「知っておきたいこと」を実践的にわかりやすく解説
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