エルダー2023年12月号
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(インタビュー/溝上憲文撮影/中岡泰博)現在も残る〝男性優位〟の状況を改善し女性も企業にとって重要な戦力である認識をです。その方たちも家にいるより収入も得られ、なによりお客さまに「ありがとう」といってもらえるのがうれしいと好評だそうです。一方で、地方が抱えている課題はほかにも  あり、その一つが労働生産性の低さです。勤続年数が長く、60歳を超えてもいつまでも働ける、あるいは会社もそれで存続できるというのは、一見よいことに思われますが、それだけでは地方は発展しません。地方が伸びなければ日本全体も成長しませんし、国際競争力も落ち、所得水準も下がっていく一方です。大矢 やはり生産性を上げていくことです。そのためには、社会情勢の動きに合わせて最新のスキルの修得や多様な経験の蓄積などを行い、それを新しい発想に結びつけていく機会を提供していくことが必要です。しかし地方には教育訓練をしてくれる機関や多様な経験ができる機会が乏しい現状があります。例えば、先ほどのリフォーム関連会社のように、事業の継続を高齢者が支えつつ、そこで生まれた時間を使って、40代、50代の高齢期を迎える社員の学び直しやスキル修得のトレーニングをどうしていくかを、地方でも考えていく必要があるのではないでしょうか。大矢 男女共同参画に関する意識調査」で「家庭や職場などにおいて男女が平等だと思うか」を聞いています。家庭では43・1%が男性優位だと答えていますが、職場では56・8%が男性優位だと回答しています。若い世代になるほど「平等」という回答が増えるので、意識が変わってきているのだろうと思われますが、例えば農業関係の集まりに女性が行くと「なんで女がきた」といわれるとか、町内会長選挙でも「選ぶなら男性だよね」という暗黙の圧力があって、女性は立候補もできないという声も聞きます。家庭のなかでは平等でも、地域や職場で男性優位が続くかぎり、女性はなかなか昇進できませんし、男女の賃金格差も縮まりません。こうした意識を変え、女性の活躍の幅を広げる青森県が実施した「令和2年度青森県ことが労働力不足解消にもつながります。大矢 は、出産・育児などにより、それまでのキャリアを中断した経験がありながら、復帰後も強い決意を持って仕事をされてきた方もいると思います。その人たちが「今後も活躍したい」と思っているのであれば、その力を十分に活かせる環境を提供していくことが必要です。彼女たちのなかには家庭内の性別役割分業を抱えつつ、職場では「女性だから」といわれながら、柔軟にスキルを発揮してがんばってこられた方々もいるでしょう。持ち味の柔軟性を活かした活躍の場があるはずです。「家計を支えるのは男性だから定年後も雇わなければいけない」という発想ではなく、女性も企業にとって大事な戦力だという意識を持っていただきたいと思います。定年まで働き続けてきた女性のなかに―地方が成長していくためには、何が必要でしょうか。―大矢さんは、青森県男女共同参画審議会の会長も務められています。ジェンダー平等などの現状はいかがでしょうか。様です。長く働き続けたいと思う女性に企業はどう対応すべきでしょうか。―働くことに対する高齢女性の価値観も多青森公立大学 経営経済学部 教授大矢奈美さん2023.124

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