はじめに中高年男性の労働価値観の実状“ポスト高齢者”であるミドル世代を取り巻く現状217まき小こ島じ明あ子こ株式会社日本総合研究所創発戦略センタースペシャリスト総務省「労働力調査」※によれば、1976(昭和51)年には就労者全体の約3割であった45歳以上の就業者の比率が、2021(令和3)年には約6割弱まで上昇しています。少子高齢化が進む日本社会においては、今後もこの比率は増えることが予想され、多くの職場において、若手よりも、中高年が高い比率を占める可能性があります。特に、いまの中高年世代は、総合職などで活躍をしている女性が少なく、管理職の多くは男性です。平均寿命も延びつつあるなか、多くの中高年男性は、役職定年や定年にともなって、キャリアの頭打ち感に悩む人は少なくありません。本稿では、中高年男性が抱える悩みや不安とその要因とともに、中高年世代を活性化させることの意義について、2022年に公表した株式会社日本総合研究所「東京圏で働く高学歴中高年男性の意識と生活実態に関するアンケート調査結果(報告)」(以下、「日本総合研究所の調査」)をもとに解説します。日本総合研究所の調査は、2019年に民間企業かつ東京都内のオフィスに勤務し、東京圏に所在する四年制の大学あるいは大学院を卒業した45歳から64歳の中高年男性を対象に行いました。そのなかで、就業継続に関する意思決定に影響を与える労働価値観について調査をしています。一般に、就業継続にあたっては、仕事に対する本人の考え方が影響すると考えられます。具体的には、「働くことによって得られる便益」と「働くことにともなう費用」を天秤にかけ、便益が費用を上回れば就業を行うという意思決定がくだされると考えられます。ただし、便益、費用ともその考え方は個人によって異なる主観的なものと考えられます。「働くことによって得られる便益」は、働くことによって得られる給与所得や会社における安定的な地位の確保といった“外的報酬”と、仕事を通じて得られる自己成長や仕事そのもののおもしろさ・楽しさといった“内的報酬”に大別することができます。「働くことにともなう費用」は、仕事をすることによってあきらめなければならないプライベートや家族との時間といった時間に関するものに加え、仕事によって負わなければならない精神的なストレスや肉体的な疲労といったものが含まれます。これをまとめると、「働くこ※ https://www.stat.go.jp/data/roudou/index.html特集ミドル世代から始める 生涯現役時代のキャリア研修エルダー総論
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