ます。まさに、ワーク・ライフ・バランスを支える多様な働き方が求められているのです。ワーク・ライフ・バランスを図りながら生涯現役で働くことの意義とはそこで、高齢者がワーク・ライフ・バランスを図りながら、多様な働き方で仕事を続ける意義を「高齢者の視点」、「企業経営の視点」、「社会全体の視点」で整理したいと思います(図表)。①高齢者の視点いくつになっても周囲から必要とされ、好きなことを自分のペースで続けることが高齢者のウェルビーイングに大きく寄与することは論をまたないと思います。日本の生きがい研究に大きな影響を与えた精神科医で作家の神■谷■美■恵■子■は、生きがい感の基本的要素の一つとして「生存充実感」をあげ、仕事を通じた使命感・役割感が生きがいの大きな構成要素であるとしています。逆に、老年期の悲哀の大部分はその使命感・役割感の欠如によるものとしています※2。ラップ社が150カ国を対象にした50年にわたる調査研究の結果でも、「人生の幸福の5つの要素」の根幹に「仕事に情熱を持って取り組んでいる」をあげています。また、仕事への熱意が身体的な健康状態に影響することも実証されています※3。ています。内閣府調査では、ひきこもりは不登校や若年世代だけでなく、中高年期も含めて、全世代にまんべんなく起きていることや、中高年期のひきこもりのきっかけの最多が「退職」である※4としており、社会参画の視点でも仕事を続ける意義は大きいといえるでしょう。「ワーク・エンゲイジメント」は、加齢とともに上昇することが明らかにされており※5、旺盛な仕事への熱意を発揮できる機会の提供が高齢者このことは日本だけの特性ではなく、米ギャ近年、中高年のひきこもりが社会問題となっまた、仕事への熱意や没頭・活力から成る2024.18※ 筆者作成※2 神谷美恵子『生きがいについて』(1966年・みすず書房)※3 トム・ラス他『幸福の習慣』(2011年・ディスカヴァー・トゥエンティワン)※4 内閣府「生活状況に関する調査(平成30年度)」※5 厚生労働省『令和元年版 労働経済の分析―人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について―』■・仕事を通じた生きがい向上・高いワーク・エンゲイジメントの発揮自らの可能性を広げる機会を持つフリーランスも選択肢にする・地域共生社会づくりへの寄与・社会全体での人材の有効活用無意識の偏見の克服高齢者に配慮したマッチング支援図表 生涯現役で働くことの意義と課題・人手不足への対応・ダイバーシティ経営の推進経験を活かせる役割の付与柔軟な勤務環境の整備企業経営高齢者社会全体〈課題〉〈課題〉〈課題〉
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