エルダー2024年1月号
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■■■■■■■■■9■■村■順■子■理事長は、「貧困に苦しむ非正規雇用の生涯現役社会の実現に向けた課題とは次に、このような意義を実現していくうえで新卒入社後、定年まで同じ会社で働き続けるその弊害として、自分の経験やスキルが社外副業が解禁されつつありますが、高齢社員かの生きがい視点でも重要性を増しています。②企業経営の視点企業経営の視点からの意義は、まず「人手不足」への対応があげられます。有効求人倍率が高止まりを続け、介護サービスや社会福祉領域、運輸業界などでの深刻な人手不足が連日のように報道されています。IT技術による効率化は進めつつも、人によるサービス提供が必須な領域では、業務の棚卸し・細分化を図るなかで、高齢者の力を有効活用することは今後ますます重要となります。次に、近年企業が進める「ダイバーシティ経営」の面でも、従来からの女性活躍、障害者雇用、外国人雇用に加えて、高齢社員の活躍を重点取組み分野に掲げる企業が増加しています。それも、社会福祉的な観点ではなく、人的資本強化の観点で多様な価値観を持った人材の交流を図ることで、新たなイノベーションを追求する動きが広がりつつあります。この点、早稲田大学の竹■内■規■彦■教授は「シニアが長年蓄積してきた専門性・スキル・経験に着目し、既存メンバーの知と組み合わせ、知の多様性を追求する必要がある」※6と論じています。また、先に触れた通り、高齢者の高いワーク・エンゲイジメントを積極的に活かす視点も、企業経営上重要でしょう。「50歳以上の大企業勤務者が円滑に転職できる環境を整備することは重要な政策課題」と指摘し、当該層からの転職先で多い「中小企業の仕事の仕方の理解」がとりわけ重要としています※7。の課題を、同じく三つの視点で考察していきます。①高齢者の課題会社員は、昭和後期から平成初期に大企業に入社した層を中心に依然多くを占めていると思われます。厚生労働省の調査では、60歳定年の企業における定年到達者の87・1%が継続雇用を選択している実態を示しています※8。で通用するのかイメージが持てず、自らの市場価値も把握できないまま、65歳以降の再就職活動で苦戦する人が多いことがあげられます。らの申請はほとんどないとの声も数多く聞かれます。またせっかく、会社の斡旋で転職できても、古巣のやり方に固執し、転職先になじめず③社会全体の視点有償・無償問わず、働く元気な高齢者が増えることで、医療・介護など社会保障制度の安定につながることはたいへん意義深いものがあります。また、住民一人ひとりが世代や分野を越えて支え合う「地域共生社会」の実現に向けて、そのにない手として高齢者への期待が膨らむのは全国共通ではないでしょうか。阪神・淡路大震災をきっかけに、神戸市で四半世紀にわたり「地域の助け合いの居場所」づくりに奔走してきた認定NPO法人コミュニティ・サポートセンター神戸(CS神戸)の中■若者、シングルマザーとお子さんたち、孤立した高齢者を支え、互いに助け合う居場所が足りません。そのにない手も圧倒的に不足しています。60代の会社員は仕事の負担を軽くして週一回は地域活動に参加してほしい。70代は地域活動の主力として大いに活躍してほしい。80代はにない手の応援をしてほしい」と、定期開催の「輝くシニアデビュー講座」、「子どもの居場所担い手養成講座」などを通じて呼びかけを続けています。また、福祉領域に留まらず、社会全体で人材を有効活用することの重要性は論をまたないと思います。この点、玉川大学の大■木■栄■一■教授は※6 竹内規彦「シニアの心の高齢化をいかに防ぐか」、『Diamond ハーバード・ビジネス・レビュー』2019年4月号(ダイヤモンド社)※7 大木栄一「高年齢者の大企業から中小企業への円滑な転職」、『玉川大学経営学部紀要』第25号※8 厚生労働省「令和4年 高年齢者雇用状況等報告」特集シニア世代のワーク・ライフ・バランスエルダー

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