エルダー2024年1月号
26/68

東京大学名誉教授 佐■藤■博■樹■2023(令和5)年10月6日に開催された「高年齢者活躍企業フォーラム」より、東京大学名誉教授の佐藤博樹氏による基調講演の模様をお届けします。高齢者が活躍できる職場づくりに向けて、多様な人材を受け入れ、それぞれが能力を発揮する仕組みを構築していくダイバーシティ・マネジメントのポイントについてお話しいただきました。多様な人材が活躍できるダイバーシティ・マネジメント:管理職の役割が鍵「シニアが活躍できる企業」とは、シニア社員だけを対象にした取組みを行っている企業ではなく、多様な人材の活躍を目ざして取組みを行っている企業です。多様な人材が活躍できる職場づくりを目ざした結果、シニアも活躍できる職場環境が生まれるということです。本日の話題の「ダイバーシティ・マネジメント」とは、年齢や性別、国籍などに関係なく多様な人材を受け入れて活かし、組織や企業の成長をうながす手法を意味しています。その実現には、多様な人材を受け入れることだけでなく、それぞれが能力を発揮し、組織や経営に貢献できるようにする仕組みづくりが鍵となります。ダイバーシティ経営を進めると、年齢や性別などの多様な属性のみならず、多様な考え方を持った人たちが社内に増えていきます。そうすると組織に遠心力が働き、まとまりが弱くなる可能性があります。例えば、若い人ばかりの組織にシニアが入ることで多様性が生まれ、あるプロジェクトを進めるために多様な意見を出し合うことができます。ところが、多様であるがために、1カ月議論しても意見がまとまらない、決まらない……。なぜなのでしょうか。経営的な観点での議論は尽くされ、わかりやすくいえば、あとは甲乙をつけるだけ、という状況も、極端にいうと「最後は好み」ということになり、若者だけで議論していたところにシニアも入ると、いろいろな考えが出てきてまとまらなくなるのです。多様な考え方の人たちで議論することで新しいものが生まれるチャンスが出てくる一方で、組織のまとまりがなくなる可能性がある。その問題をどうクリアしていけばよいのでしょうか。     ■■すばらしい場合、ある人は「Aがよい」、別のパス」、あるいは「ミッション」といわれるものです。先ほどの例の続きでいうと、あるプロジェクトの最後にA案とB案が残り、どちらもここで大切なのが、企業の「経営理念」や「パー多様な人材・考え方を受け入れて企業理念に基づいて決定する「令和5年度高年齢者活躍企業フォーラム」基調講演2024.124東京大学名誉教授の佐藤博樹氏新春新春特別企画❶特別企画❶

元のページ  ../index.html#26

このブックを見る