エルダー2024年1月号
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のか。これらをふまえたうえで、仕事を割りふったり、仕事意欲を高めたりと、部下と協調して仕事をする能力が求められています。対人スキルに代表されるヒューマンスキルは、かつての管理職にはそれほど求められていませんでした。ところがいまは、自分より年上の再雇用の部下がいたり、女性の社員が多くなったり、育児休業を取る男性社員がいたりと、管理職自身が経験したことがないマネジメントが求められているのです。部下のマネジメントでは、部下とのコミュニケーションによる部下理解が不可欠であるという時代になってきました。例えば、50代の部下であれば、親の介護の課題があるかもしれません。これは、聞かないとなかなかわからないことです。あるいは、将来のキャリアについても、みんなが課長や部長を目ざしたいという時代ではなくなっていて、一人ひとりキャリア観も異なります。属性や考え方など、多様性を持った部下をマネジメントしていくために、いまの管理職に求められるヒューマンスキルは質もレベルも高くなっているのです。そのためにも、多様な部下をマネジメントできる管理職を育成し、登用することが求められています。仕事のできる人を管理職にするというのは、決して悪いことではありません。しかし、仕事ができるだけではなく、「多様な部下をマネジメントできる管理職」を登用することが、現代では重要なのです。シニアを含め、多様な考え方を持った人たちを受け入れ、その人たちが意見を闘わせていくと、同じような考え方の人同士で議論するよりも、いろいろな意見が出てきます。しかし、多様な人材を受け入れている職場であっても、例えば、ある会議の場で、上司の「Aだと思う」という発言に対し、部下が「Bではないでしょうか」と反対意見をいい出しにくい職場は、“多様な人材が活躍する職場”とはいえません。上司や同僚と違う意見であっても、だれもが発言できて、多様な部下がいろいろな考えを出せるような職場づくりをしていくことが重要です。これを「心理的安全性」といいます。チームのメンバーが恐怖や不安を感じることなく、安心して発言、行動できる状態のことです。また、「シニアだから」、「女性だから」と、    その属性だけを見て判断してはいけません。例えば、一般的に「シニアは新しいことに取り組むのが苦手」だといわれますが、これは、平均的な傾向としては間違いではないかもしれません。しかし、いま自分の目の前にいるシニアの部下がそうであるとはかぎらないのです。人はつい、「無意識の思いこみ」(アンコンシャス・バイアス)をしがちです。目の前にいるシニアの部下の能力を評価するときに、「シニアは一般的に○○である」とか、「過去のシニア社員は△△だった」ということで推し量りがちです。しかしそうではなく、目の前にいる部下個々人の能力を評価することが大切なのです。があることを認識し、その思いこみが自分の思考や行動に影響を及ぼすことを最小限にするように努力して行動することが重要です。は、シニアも若者も女性も外国籍の社員も、あらゆる属性の人たちを対象にしているということです。ダイバーシティ経営を進められるような、職場風土や管理職を登用する仕組みをつくり、結果として、シニア人材が活躍できる会社を目ざしていただければと思います。自分のなかに隠された「無意識の思いこみ」多様な人材が活躍できるダイバーシティ経営管理職の「ヒューマンスキル」が求められる理由とはキーワードは「心理的安全性」と「アンコンシャス・バイアス」おわりに27

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