エルダー2024年1月号
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聞いたら、どう反応しているでしょうか。「なんでこんなになるまで報告しなかったんだ!」と部下を叱る、といった方も少なくないでしょう。その際、これ以上くり返しトラブルが起きることを避けるために、叱責は重要だと感じている人も多いのではないでしょうか。しかし、図表3のように「報告するメンバー」の立場で行動分析のフレームワークにあてはめて考えてみると、「報告する」という行動の直後に「叱責される」という【Unhappyなみかえり】があるわけですから、次にトラブルがあったときの「リーダーへの報告」が減ってしまうのです。リーダーは、ミスそのものを減らしたくて、ともすると心を鬼にして、厳しく叱っているのかもしれませんが、行動分析の考え方では、ミスそのものを減らす効果は小さく、報告を減らす効果が大きいと考えます。心理的安全性の低い、罰や不安が多く与えられる職場では、メンバーの多くの行動に【Unhappyなみかえり】が返されています。それが原因で、メンバーは行動を減らしてしまい、成果も出にくくなってしまうのです。つまり「怒られない範囲で指示されたことをやろう」、「余計なことはしないようにしよう」と、後ろ向きな努力に向かわせてしまうのが心理的「非」安全なマネジメントなのです。トラブルそのものは、望ましくないものかもしれません。しかし、もし起きてしまったのであれば、「早急に、漏れなく報告される」ことは、「報告がない、あるいは遅い状態」よりは望ましいことのはずです。行動分析を知っておけば、増やしたい行動・本来望ましい行動にUnhappyな罰を与えて、減らしてしまうことを避けることができます。行動の質や結果ではなく、行動そのものの量を増やしたいかどうかを見分けることが重要ということです。「言いにくいことだったと思うけど、いち早く報告してくれてありがとう」という言葉は、まさに発言の内容自体は「深刻なトラブル」であったとしても、「話してくれる」という望ましい行動に感謝を伝え、少しでもHappyなみかえりを伝えようとする言葉です。前回の連載(第2回)でお伝えした「言葉がけ」、そのなかの「きっかけ言葉」、「おかえし言葉」は、まさにこの行動分析のフレームワークに則った心理的安全性の高いチームをつくるための具体的な手段なのです(図表4)。重要なことは「きっかけ言葉」で行動をうながすだけではなく、メンバーが行動をした後、「おか2024.142出典:『心理的安全性をつくる言葉55』(飛鳥新社)出典:『心理的安全性をつくる言葉55』(飛鳥新社)図表3 【Unhappyなみかえり】がもたらす行動変容発覚!図表4 【Happyなみかえり】がもたらす行動変容きっかけ言葉いち早く報告!確率Down次回、同じ行動をとる確率が減るつまり、ミス・トラブルを報告しなくなる報告しなくなる確率Up次回も、また望ましい行動をとるぞ!Happyきっかけミス・トラブルが行動上司にみかえりめちゃくちゃ怒られる…Unhappyきっかけ行動メンバーの望ましい行動みかえり♥♥おかえし言葉

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