(インタビュー/沼野容子、撮影/安田美紀)年齢は数字でしかない人は何歳になっても変わることができるでは、共通の趣味があり、同じところで笑える人がいることが、とても大事だと思います。日々の活性化という意味では、好きなことに夢中になることも大事です。昨夏、85歳とンゴルに行きました。83歳の女性はがん患者で、2回も手術をしています。モンゴルは初めてで、馬なんてもちろん乗ったことがありません。最初は「絶対に行きたくない」といっていたのに、馬に乗ったら夢中になってしまって、「また来年、絶対に友だちと行きます」といっていました。「旅」は非日常体験で、夢中になることができます。すると何歳であっても元気になれます。いままで行ったことのないところに行きたいと思うと、まず「足腰が丈夫じゃないと」と考えますね。それも、とてもよいことです。昇 役目がある間は、お迎えが来ない――。私はそんな、根拠のない自信を持っています。いまも月10回以上、当直を担当していますが、産婦人科医としての役目がある間は、生涯現役でいられると考えています。人間がほかの動物と一番違うのは、「歳のとり方に差がある」という点です。10年生きた犬や猫、15年生きた犬や猫は、どの個体をとっても歳のとり方は一緒だと考えられています。しかし人間は、生きれば生きるほど差が出ます。そして、人間は若返ることがありますが、ほかの動物には、絶対ありません。「年齢なんて、ただの数字です」といった女優がいました。これは非常に重要なキーワードだと思っています。年齢はただの数字。人生100年、いくつになっても変わることができるのです。昇 まず、高齢者が「65歳以上」だと国が定義づけたのは、いつのことでしょうか。1964年の東京五輪のころ、いまから60年近く前のことです。当時は平均寿命が68歳ぐらいでしたが、60年も経っているのに、まだ定年年齢が60歳、65歳というのは、違う気がしますね。実際の感覚として、「高齢者といわれるのは75歳から」でよいと思います。てきた得意技でだれかを喜ばせたい」、「だれかを笑顔にしたい」、「笑顔を見るとうれしくなって、またがんばろうという気持ちになる」。そんな生きがいを持つことが、人間だけが獲得した長い老後、100年の人生の意味だと考えています。とではなく、ボランティアで活動するのもよいでしょう。スマートフォン、タブレット、パソコンなどのIT機器には、高齢者にこそ役立つ機能が備わっています。そういったものも積極的に取り入れて、だれかの役に立とうとすることが、シニアの世代の役割ではないかと思います。仕事でも趣味でも、「自分が長年つちかっ必ずしも企業や組織のなかで働くというこ―昇さんご自身も75歳を超えて産婦人科医として現役で活躍されていますが、生涯現役の秘訣があれば、教えてください。―高齢者が元気に、活き活きと働いていくため、高齢者を雇用する企業や地域社会に求めること、働く高齢者へのアドバイスがあれば、お願いします。2024.14産婦人科医/日本笑い学会 副会長昇 幹夫さん83歳の女性、82歳の男性を含む計5人で、モ
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