エルダー2024年2月号
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管理職から支援職へ求められる上司の未来像署を異動して、畑違いの仕事を任されるようになった。自分だけ仕事をわかっていないうえ、現場には経験豊富な4人の部下がいて、そのうち2人が年上ですごく気をつかう。その様子を見られていると思うと、若手にも気をつかう」。そんな人間関係の悩みがすごく増えてきています。これは一過性の問題ではなく、若者が少なくシニアが多い職場が一般化しつつあるので、上司と部下の年齢逆転は、今後さらに広まっていくでしょう。年下上司が悩みがちなこととして、自分の元先輩、元上司が部下になった場合、マネジメントがしづらいということがあります。「年上の方は、やり方にこだわりがあり、年下上司のやり方についてきてもらえない」というのです。一方で、年上部下の方々からは、「年下の上司が気に入らないというのではなく、自分の経験に基づいて、よかれと思って仕事の提案や、やり方にこだわっている」といいます。こうした問題は、あちこちで起きているのではないでしょうか。ある研究によると、若者とミドル・シニアとではモチベーションの源泉が異なるそうです。若いときは資源の獲得、つまり知識やスキルを吸収することがモチベーションになります。一方で、ミドル・シニアは資源損失の最小化、いわゆる〝守りに入る〟傾向が強まるわけです。こうした事情を、年下上司がしっかりと理解し、一方で、時代や環境、職場の変化をしっかり伝えて、「一緒に変わっていきましょう」というコミュニケーションをとることが大事になってきていると思います。また、年上部下の方々が、役職定年や定年後再雇用になって給料も下がり、「仕事に対してモチベーションが下がっているのでマネジメントがむずかしい」という年下上司の悩みもよく聞きます。ただ、シニアの方々にインタビューをすると、「社内での昇進・昇給が望めなくなり、これからの人生の目標やキャリアの目標を見失っている」ということもうかがえます。大切なのは、役職定年や定年はキャリアの節目・通過点であって、以降もシニアの方のキャリアは続いていくということです。ですからそれを「一緒に考えましょう」という視点を持ってコミュニケーションを行っていくことがとても大事になっていると思います。そういう意味では、旧来型の組織で求められた画一的な価値観のもとで働く職場から、多様な価値観を持つ人がともに働き助け合っていく職場へ変化し、ダイバーシティマネジメントが求められています。そのなかでコミュニケーションがとても大事な時代になってきているということです。司が、年上の部下の心を動かす」ことが大切だと思います。そのカギは「働きがい」です。職位や給与はもちろん大切ですが、働く喜びを感じられる状況をいかにつくっていくか、このことが大事なのだと思います。で動機づけするピラミッド組織から、個々を尊重して動機づけをしていくこと、①違いを認め、②価値観を知り、③あり方を定め、④やり方を変える、というコミュニケーションの循環を意識したサークル型の組織づくりが求められていると考えています。りの持ち味をふまえて仕事を任せ、育て活かし、共通の目的に向かう組織の力を高め、個人では達成できない結果を導き出すこと」。そのためには、誤解を生まないようなコミュニケーションが大切になります。「管理職」という言葉を日本の企業はもう卒業し、多様な部下の活躍を支援する「支援職」に変わっていくことが、上司の未来像だろうと思います。そこで求められる上司力として、「年下の上組織づくりでは、従来の「ポスト」と「報酬」私の考える上司力の定義は、「部下一人ひと11エルダー特集生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム 〜開催レポートⅠ〜

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