■■女性特有の健康課題と働き続けるために必要なこと女性が働きやすい職場はだれもが働きやすい環境ばれるために会社の価値や魅力を高める、そして、集まった人たちにフィットする人事制度や働き続けられる働き方を提供し、モチベーションを高め、一人ひとりの生産性を高めることが重要になってきています。女性は、生物学的な性差(生殖機能)による健康課題の影響を受けやすいとされています。女性ホルモンの影響により、生涯を通して月経や病気のリスクが変化し、例えば、女性ホルモンの分泌が安定しているといわれる20〜30代でも、妊娠や出産によるホルモンの大きな変化を経験する方が多くいます。40代からは、更年期症状に悩まされる方が多くなります。日本人の平均閉経年齢は50・5歳といわれ、その前後5年間は、女性ホルモン減少の影響を受ける更年期と呼ばれています。また、閉経後には骨■粗■しょう症■や心血管系疾患、高脂血症など、それまで罹患するリスクが少なかった病気への注意も必要になってきます。女性のライフキャリアを考える場合は、こうした女性の体の変化についても学ぶことが必要です。このような女性特有の健康課題に対して企業ができることとして、私は、女性自身にヘルスリテラシーの向上をうながすことが大切だと考えています。女性特有の健康知識が高い女性とそうでない人を比べると、高い女性のほうが仕事のパフォーマンスが高い、という結果が出ています※2。働く女性が、自身に関する健康知識とその正しい対処法の知識を持つことにより、セルフマネジメントができるようになります。加えて、利用できる制度や周囲のサポートがあるなら、積極的に利用することで、健康課題によるパフォーマンス低下を予防する、あるいは、低下した状態を長引かせないようにすることが可能になります。そのためにも、女性自身が積極的に学び、アクションを起こすということが大切になってきます。また、女性が働き続けるためには、女性特有の健康課題とともに、多くの女性が妊娠、出産、育児、介護などのライフイベントの影響を受けやすいことへの理解と支援も大事になります。女性のキャリア形成のために、企業はライフキャリアを含めたキャリアプランニングと、さまざまなキャリア支援に取り組むことが大事になっていると思います。特に、30〜40代の管理職への昇進を期待される時期と、健康課題やライフイベントが重なる可能性がとても高いので、その事実をしっかりとご理解いただきたいと思います。えていますが、生理痛やPMS(月経前症候群)による症状がつらくても、約5割の方が「周囲に伝えない」というアンケート調査結果があります※3。一方で、85%の働く女性が「月経症状で悩んだ経験がある」と回答し司や同僚に月経への理解を深めてほしい」と回答しています※4。は、管理職層への啓蒙・研修と考えます。特に、※2 特定非営利活動法人日本医療政策機構「働く女性の健康増進調査2018」※3 株式会社ツムラ「生理・PMSの本音と理解度調査」(2022年)※4 株式会社明治「生理の悩み実態調査」(2022年)現状では多数を占める男性の管理職層が、女性の健康とキャリアに関する知識を身につけ、意識と行動の変化をうながすことで、職場の心理的安全性が醸成されやすくなります。女性も男性も、全社員が女性の健康とライフキャリアで起こりうることを知ることで、共通の理解と言語が醸成され、徐々に風土の変化につながります。女性が働きやすい制度、支援、風土がある職場は、じつは、すべての社員にとって働きやすい環境といえます。まさに、全社のダイバーシティ&インクルージョンの取組みにつながるアクションだと思います。女性の多くが女性特有の健康課題の悩みを抱こうした女性の声に対して会社ができること、77・6%が「上■19エルダー特集生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム 〜開催レポートⅠ〜
元のページ ../index.html#21