エルダー2024年2月号
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医療職としてサポートしていること高齢従業員の悩みと配慮のポイント働き方の基準は一人ひとり違う「高齢者」をひとくくりにしない延長の条件として、1年ごとに体力テストと認知力テストを追加し、加えて全員と面談をすることとして現在に至っています。てくると、最近では手術後や体力が落ちているような方も働き続けることを希望されるようになり、現場では「しっかりとリハビリをしたら、復帰して働くことを応援する」という姿勢が定着してきていると感じます。一方で実際に面談をしていると高齢者特有のさまざまなケースがありますので、その一部をご紹介したいと思います。高齢の方からよく、「若いころに比べて、作業スピードが落ちている」、「この歳で働けるのはうれしいが、職場でお荷物のように思われていないか心配」といった悩みをお聞きします。「大丈夫ですよ」とお答えするのですが、どんな場面でどのような出来事があるのか、職場管理者にもヒアリングし、日ごろの働きぶりを確認します。年相応のケースがほとんどですが、そうしたことを自分で受け入れられず、悩んでしまうケースもありますので、医療職としてサポートをしています。働き方はいろいろな設定が可能で、契約更新の際に勤務時間などを見直して無理がないようにしています。ただ、よくよくお話を聞くと、忙しい店舗で「勤務時間を減らしたい」とはいい出せずにいて、「家に帰ったら疲れてすぐ横になっています」というような方もいるので、しっかりサポートして適切な勤務時間になるように対応しています。また、業務指示を忘れたり、勤務日を間違えたりすることが多くなり、「認知力が低下しているのではないか」と周囲から指摘され、上司から保健スタッフに相談されるケースもあります。ご本人は、働いていることで周囲の同世代より元気であることが自慢で、認知力の低下を受け入れられない様子でしたが、私たちも慎重に伝えながら面談をくり返すなかで、忘れていることが多いことを自覚し、医療機関の受診につなげたケースもあります。それから「主婦業に定年なし」という言葉を聞くことがありますが、勤務後に家族の食事の用意、掃除、洗濯、孫の送迎までして、慢性的な疲れがみえる方もいます。サポートする際は、プライベートの過ごし方も考慮していく必要があるかと思います。ときに、退職して家にいる夫にどのように家事を手伝ってもらうか、いっしょに考えることもあります。ないことだと思います。例えば、深夜の勤務は高齢の方には負担が大きいと考えがちですが、ご家族のライフ・ワークスタイルの関係で、「昼間の早い時間の仕事のほうが、負担が大きい」という方もいます。シフトの組み方も希望はそれぞれです。働く目的も、生活のため、老化防止のため、生きがいなどさまざまですから、働き方の基準は人それぞれだと考えるようにしています。ントを私なりにまとめると、制度先行ではなく、「仕事を続けてもらうにはどうしたらよいか」からスタートしたこと、働き方の選択肢が多いこと、適切な就労条件にも個人差を考慮していることなどがあげられます。もっと高齢者の特徴を理解してもらうこと、転倒などによるケガの予防、職場のDX化へのサポートなどです。高齢者の割合が多くなればなるほど、一人ひとりへの配慮に限界が生じる可能性があるため、対応を見直して検討する時期が訪れると考えています。大事なことは、「高齢者」とひとくくりにし職場で高齢の方が活き活きと働けているポイ今後の課題は、管理者層や同僚の若い世代に23エルダー70歳以降も働ける職場になり、だんだん慣れ特集生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム 〜開催レポートⅠ〜

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