■■妊娠、出産、生涯にわたる健康支援労働災害の防止対策に関する課題は課題の解消には、男性の側の理解が必須新しい対策、対応が必要になっている第三の課題は、妊娠、出産にともなうことです。職場の健康配慮は、事業者の責任として労働安全衛生法を中心に法律的な定めがありますが、これらは妊産婦による「請求」を前提とした措置なのです。産前産後休業だけでなく、例えば、軽作業に転換する場合や、危険有害業務の就業制限、変形労働時間制の適用制限などがありますが、条文には、請求した場合に、とあり、流産の心配、職場の人間関係に不安がある場合などに、請求がスムーズにできるのかという点が懸念されます。第四の課題は、生涯にわたる健康への支援です。「女性版骨太の方針2023」には、事業主の健康診断の充実などによる女性の就業継続の支援などが掲げられ、例えば、毎年の定期健康診断で、月経困難症、更年期症状などの女性の健康に関連する項目を追加するとともに、産業保健体制の充実を図ることがあげられています。方法論やルールが定められた後、実践できるのかという点が今後の課題です。第五の課題は、女性の労働災害の防止です。厚生労働省の調査※2によると、休業4日以上の転倒災害の千人率は、60代以上は20代の約15倍に増加することが明らかになっています。非常に大きな問題です。高齢になるとけがが治るまでに時間がかかるようになり、休業期間が延びてしまうことも、同じ調査から明らかにされています。また、多くの業種で転倒災害に遭う高齢女性が多いこともあります。これに対して厚生労働省は、2023年4月からの「第14次労働災害防止計画」のなかで、中高年女性を中心に、作業行動に起因する労働災害防止対策の推進として、転倒などに対して対策を行うことや、腰痛の予防対策として介護職員の身体の負担軽減のための介護技術などの導入を図ることなどをうたっています。また、2023年7月1日から行われた全国安全週間実施要綱では、「高める意識と安全行動 築こうみんなのゼロ災職場」のスローガンのもと、対策の一つとして、中高年女性を対象とした骨■粗■しょう症■健診の受診勧奨をあげています。これは地域で受けることになっていて、いまのところ職場では義務化されていないため、注目に値することだと思います。第六の課題は、個人の悩みごとへの対応です。私は、健康管理の枠組みを超えて企業や自治体などで、いろいろな相談を受けています。フォーマンスを要求されて、20代から60代まで持続的に応えることのむずかしさがあります。また、出産やその前の段階ではいろいろと配慮してもらえるのですが、例えば、「思春期になってお子さんに接するのがむずかしい」、「不登校で悩んでいる」ということも起こります。こういった悩みをなかなか口に出せず抱えている方は少なくありません。とを夫があまり望んでない」など、不仲になってしまうケースもあり、プライベートで夫婦関係に悩むという方も少なくありません。るような女性の場合、すべてを犠牲にして仕事に取り組んでいる場合もあり、孤独で悩んでいる方もいらっしゃいます。部、管理職の特に男性が、こういったことを知って対策の必要性を理解することが必須です。そのうえで女性の就業を支援することが、自然にできていくことが大切と考えます。から新しい対策、対応が必要になってくると思います。例えば、体調の変化もあるなかで、高いパほかにも、「女性が社会的に成功していくこさらに、社内外のロールモデルとして活躍す課題の解消には、意思決定を行う経営陣や幹今回ご説明した課題を解決するために、これ※2 厚生労働省「令和4年高年齢労働者の労働災害発生状況」■25エルダー特集生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム 〜開催レポートⅠ〜
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