エルダー2024年2月号
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■■■■■■帖■佐■孝■生■さん(67歳)は、建築会社勤務などをプランナーが定年制改定を支援若手のサポート役としても活躍誠実な仕事をするためにも、人として豊かであること、互いを尊重しチームとしての結束力を高めていくこと、そして建設の仕事には工期があり、多忙な時期もあることから、「やる時はやる、やらない時は一切やらない」という気持ちの切り替えも大事にしています。同社の社員数は144人。若い人材も育っていますが、コロナ禍以前から少子高齢化による人手不足が続いているうえ、最近は、建設業を志す若い人が少なくなっており、新卒者の採用はさらにむずかしくなっているそうです。「そうしたなかで現場管理者が定年を迎える年齢になり、『もう少し』と引きとめているうちに高齢社員が多くなりました。当社は現場管理の仕事が中心です。現場で学ぶことが多く、年長者の豊富な経験は会社にとって貴重な財産。その人たちの力が必要ですから、元気なうちはいつまでも働いてもらいたいと考えています」(渡辺社長)以前から70歳を超えても働ける慣行はありましたが、制度化していなかったため、その検討を始めたタイミングで、たまたま岩元プランナーが同社を訪問したそうです。岩元プランナーは、「高齢社員がさらに活躍できる仕組みとして、定年年齢の引上げや70歳までの継続雇用を検討しているとお聞きし、制度改善に向けた支援を行いました。制度を設けるだけでなく、個々の高齢社員の強みを活かし、長期継続可能な人材活用をふまえての制度提案、および生産性向上を図るうえでの取組みについても助言しました」と当時をふり返ります。検討の結果、2021年8月に65歳への定年年齢の引上げ、希望者全員70歳までの継続雇用制度を導入しました。個々の社員のライフプランなどを考慮し、制度改定時点で55歳以上60歳未満の社員は、退職と退職金支払い時期について選択できる仕組みとしました。改定にあたっては、半年ほど前から全社員に周知し、意見や質問を受けつけたそうです。社員からは、「60歳定年と65歳定年、自分の場合は何がどう変わるのか」といった質問などがあり、それらに対して岩元プランナーが一つひとつ回答しました。渡辺組の人事労務を担当する高■吉■克■児■経営管理室長は、「どんな質問にも答えていただき、専門家から伝えてもらったことで社員の安心感も高まったと思います。とても助かりました」と岩元プランナーの支援に感謝を述べていました。改定以降、定年を迎えた社員はほとんどが継続雇用を希望し、現在65歳以上の社員は17人。うち1人は70代で、建築の現場監督を続けています。仕事と責任が変わらなければ、継続雇用でも賃金は定年前の水準が維持され、評価によって賃金が上がることもあります。継続雇用は1年ごとに更新し、体調などに応じて週4日勤務にするなど、働き方にも柔軟に対応しています。渡辺社長は、「無理はさせません。高齢社員にかぎらず、若手社員でも健康上の理由でフルタイム勤務がむずかしくなるケースもあります。そうした場合でも、できることはたくさんありますから」と働き方への対応について話してくれました。今回は、長年つちかってきた技術と経験を継承しながら若手の仕事をサポートする、ベテラン社員にお話を聞きました。経て、38歳のときに渡辺組に入社、勤続年数は29年になります。渡辺組の技術本部建築・積算・設計部門に所属し、定年前は現場管理者として活躍。65歳の定年以降は、週5日のフルタイム勤務は変わらないものの、現場管理者の役割を一部にないつつ、並行して、現場図面チェックや施工図の作成を担当しています。「正確な施工図、わかりやすい施工図の作成を心がけています」と現在の仕事を語る帖2024.232

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