ネス環境のなかで組織の状態を良好に保ち続けることは、終わりなき取組みなのです。そして、どうしてもトラブルや不祥事が起きると、心理的安全性は悪化しがちです。ですから、心理的安全性が高いときこそ「なぜ、わたしたちのチームは高いのか」、「わたしたち一人ひとりの、どのような行動が心理的安全性づくりに貢献しているのか」を明らかにしておくことで、状態が悪いときにもその行動を思い出したり、またほかのチームへ「組織のなかの好事例」として横展開することができます。このような「対話」の重要性は、多くの人が耳にしたことがあるのではないかと思います。しかし落とし穴もあります。みなさんも、いきなり「さあ、組織の課題や方向性について何かしら対話をしてください」、「心理的安全性について、自由に活発な対話をお願いします」といわれても、何を話してよいのかわからず、なかなかむずかしいのではないでしょうか。そこで活用できるのが、先述のサーベイ結果です。客観的な数値があることで、数字の方向を向いて話すことができ、結果として人を悪者にするのではなく、組織やチームと、よい距離感を保って対話をしやすくなります。対話を元に現状の認識をそろえたうえで、その次に「対話による解決案の立案」をすることで、よりチームのなかで実態に合った立案ができるようになるのです。●ステップ3:「きっかけ言葉」と「おかえし言葉」による、組織の活性化心理的安全性の計測は「体温計や体重計」と記載した通り、心理的安全性への取組みは、継続して日常的に行い続けるべき取組みです。組織やチームの人々の不断の努力によって、心理的安全性は保たれます。そこで、日常的に仕事を進めるうえで使われる「言葉」に焦点をあて、心理的安全性の維持・向上を試みます。第2回※で紹介した、「きっかけ言葉」と「おかえし言葉」を使います(図表2)。第2回では、声かけの言葉は「きっかけ言葉」と「おかえし言葉」の大きく2種類に分類でき、「きっかけ言葉」は相手の行動をうながす言葉、そして「おかえし言葉」は起きた行動や結果を受け止めるものだとお伝えしました。よい「きっかけ言葉」は、人々の背中を押し、行動をうながします。また、よい「おかえし言葉」は、行動した人がHappyに感じる言葉を投げかけることで、行動や結果をしっかりと受け止め、「また、次回もこのような行動を取ろう!」と感じさせ、組織・チームの行動を活性化させます。日常でなにげなく使っている言葉を、心理的安全性をつくる言葉に変えることは、すぐに取り組めます。例えば、「おかえし言葉」の改善例を見てみ出典:『心理的安全性をつくる言葉55』(飛鳥新社) ※ 「エルダー」2023年12月号https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/book/elder_202312/index.html#page=42イラスト/やまね りょうこ2024.238図表2 「きっかけ言葉」と「おかえし言葉」行動をうながすきっかけ言葉おかえし言葉受け止める♥♥
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